06年8月、業界首位の王子製紙は北越製紙(現・北越紀州製紙)に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたが、失敗に終わった。反王子感情が業界には強かったからだ。
そこへ、三菱商事が敵対的買収を撃退するホワイトナイト(白馬の騎士)として登場。第三者割当増資を引き受けて、24.4%を保有する筆頭株主になった。さらに、日本製紙グループ本社も第2位の株主として登場。反王子連合に馳せ参じた大王は、TOBに反対する上申書を提出して、破談に導く一翼を担った。
大王と北越は「反王子」でタッグを組み、「業界の信頼関係に亀裂を生じさせた」として、当時の鈴木正一郎・日本製紙連合会会長(王子製紙会長)の辞任を要求した。このとき、当時の大王の副社長だった井川意高氏は、『論語』の一節を引用して「義を見て為さざるは、勇なきなり」と言ってのけた。
このTOB騒動を契機に、大王と北越は株式を持ち合う関係になった。反王子のスクラムを組んでくれた大王に対して北越紀州の岸本哲夫社長は「恩義を感じている」と語っていた。今回、経営陣と創業家の対立で分裂状態になっていた大王に救済の手を差し伸べた背景には、この時の恩に報いる、熱い思いがあったのかもしれない。
次の焦点は、北越紀州と同じ三菱グループで業界6位の三菱製紙(12年3月期売上高1948億円)との統合だ。05年まで北越と三菱は資本・業務提携を行う近しい関係にあった。だから、北越紀州、大王、三菱製紙の連合で第3極を形成するシナリオが、当然、考えられる。束ねるのは三菱商事。三菱系の大製紙会社の誕生である。
そうなれば、住友も動く。それまで業界3位だったレンゴー(同4926億円、今回、第4位に転落)は日本製紙グループ本社、住友商事の3社で業務提携していた。この時、日本製紙とレンゴーの統合も視野に入っていたというが、この提携は09年3月に解消された。レンゴーは段ボール原紙で首位の住友系で、99年にはセッツを吸収合併している。今後、新たな提携先を探すことになろう。
「大王子」が復活した王子製紙に対抗する第三勢力の盟主となるのは三菱商事か、それとも住友商事か。巴川製紙所(メインバンク三井住友銀行)、トーモク(三菱商事が第2位の株主)などの動向が注目される。
(文=編集部)