創業家と現経営陣の間に立って事態を収拾したのが北越紀州。創業家が実権を握っている関連会社18社の株式を北越紀州がいったん買い取り、大王(現経営陣)に売却する。
創業家が実権を握る関連会社には紙おむつやティッシュペーパーなど、利幅の大きい主力製品を生産する工場が含まれていた。対立の解消により、新聞用紙・段ボール原紙の産業用紙と「エリエール」ブランドのティッシュなどの家庭用紙が分裂状態にあった大王グループの経営が一本化する。
そして対立の再燃を防ぐために、北越紀州が大王の株式の2割を創業家から100億円で取得する。両社は既に株式を持ち合っており、北越紀州は大王株の2.85%を保有している。これに創業家からの取得分を加えると、大王への出資比率は2割を超え、筆頭株主になる。創業家は100億円を原資に借金を返し、大王の経営からも手を引く。
食品箱などに使う白板紙や、印刷用紙に強い北越紀州と紙おむつやティッシュペーパーなど家庭紙に特色がある大王が提携すれば、事業の補完関係が生まれる。
12年3月期の連結売上高は大王が4089億円、北越紀州は2305億円。両社の合算で6394億円になる。王子製紙(売上高1兆2129億円)、日本製紙グループ本社(同1兆424億円)に次ぐ業界第3位連合が誕生するわけだ。
製紙業界は再編の歴史そのものである。戦前、日本の用紙生産の90%を占めていたのは三井財閥系の巨大会社・王子製紙だった。王子は戦後の財閥解体で、苫小牧製紙、本州製紙、十條製紙の3社に分割された。バブル崩壊後の93年以降、旧王子系による独立系を巻き込んだ再編が進み、96年、旧苫小牧と本州が一緒になり新・王子製紙となった。十條を母体とする日本製紙は01年に大昭和製紙を統合。日本製紙グループ本社が誕生した。
その結果、製紙業界は王子製紙と日本製紙グループ本社という旧王子系の2強体制ができつつあった。だが、寡占化への反発は思いのほか強かった。