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アベノミクスのせいでAKB48が終了へ!? 経済学者が語るその理由とは

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0504_sinkanjp.jpg※画像:『日本経済復活が
引き起こすAKB48の終焉』

著:田中秀臣 /主婦の友社

 安倍晋三総理による金融政策“アベノミクス”が始まって以来、景気の回復に関するニュースが多くなった。日本銀行の大胆な金融政策は市場の好感を呼び、株価が上昇。さらに円安が進んだことによって輸出産業で経営の改善の兆しが見えているという。確かに、実際の自分の給料に景気回復の色は見えなくても、これまでと比べれば前途は明るいように感じる。

 ところが、そんなアベノミクスによって窮地に追い込まれつつある産業があるという。それが女性アイドル産業であり、特に影響が強いのが、その代表的な存在である「AKB48」だ。

 2月に発売された30枚目のシングル「So long!」は、2011年2月にリリースされた「Everyday、カチューシャ」より10枚連続で発売初週でのミリオン突破(オリコン調べ)と、勢いは全く衰えていないように見えるのだが、経済学者の田中秀臣氏は『日本経済復活が引き起こす AKBの終焉』(主婦の友社/刊)で“AKBが終焉に向かっている兆候”をいくつか指摘している。

■デフレ経済に強かったAKB48のモデル

 もともとのAKB48のコンセプトは“会いに行けるアイドル”というもので、秋葉原に劇場を常設し、毎日のように正規チームが公演を行っていた。また、シングルCDに握手券を特典として付け、ファンとメンバーが直に触れあう機会を作った。

 さらに、少しずつ大きくなってくると、今度はリアルの接触だけでなく、「Google+」(ぐぐたす)というSNSにメンバー全員が参加。メンバーのコメントや仕事風景や日常生活の写真が次々とアップされ、少し距離が遠くなっていたメンバーが再び身近に感じられるようになった。

 他に、チケットやグッズも、お金をあまり持っていないファンでも手が伸ばせるような価格設定にされているという。例えば最近のメンバー別の写真集は1500円程度で、さらに特典もついてくる。

 こうしてファンたちは、AKB48メンバーたちの成長を見守り、また自らその体験を共有し、深く感情移入していく。情報収集はインターネットがメインなので、ほとんどお金がかからない。つまり、「あまりお金を使わない」というデフレ経済下の人々の消費行動に適したモデルをAKB48は作り上げていたのだ。

■壇蜜のブレイクが意味するものとは?

 しかし、今やデフレから脱却し、世はインフレに向かっている。そうなると人々の消費行動も変化を見せる。その一つの特徴は、物語消費からリアルな消費に移行するということだ。

 景気が良くなると、「あまりお金を使わないようにしよう」と考えていた人たちが、それまでの反動からリアルな消費に走るようになる。テレビやインターネットに満足していた人たちも、使えるお金が増えて外でお金を使うようになるのだ。

 田中さんは消費行動の変化の象徴として、今年ブレイクした壇蜜さんの名を挙げる。ファンや報道陣の目の前で自ら下着を脱いだり、下着付きの写真集を発売して大きな話題を呼んでいるが、こうしたパフォーマンスやサービスは不況下には見られなかったもので、田中さんは90年代のバブル期に活躍したセクシーアイドルたちとその存在を重ねる。

 また、デフレ解消は“一人勝ちの解消”でもある。デフレ経済に強いモデルを築き上げてきたAKB48は、ファンたちに「他にお金を使わせない」という消費行動を取らせてきたといえる。ところが、好景気になり手持ちのお金が増えてくると、お金を使う場所の選択肢が増えるのだ。

 そのとき、よりAKB48に注ぎ込むのか、それとも他のアイドルグループに向かうのか、はたまたよりリアルな場面で消費されるのか。場合によってはAKB48人気の急速な衰退もありえるはずだ。

 田中氏は様々な角度からAKB48の厳しい状況について分析を重ねるが、もちろんそれは「AKB48憎し」という気持ちでやっているのではない。田中氏の推しメンは北原里英さんであり、今後AKB48が生き残っていく上で、今が最も重要な時期なのだという想いが文章の隅々から伝わってくる。

 また、「全アイドル参加の選抜総選挙開催」など、アイドル業界活性化のためのアイデアなども提示しており、AKB48の経済本としてはかなりユニークな内容となっている。

 アベノミクスに対して賛否両論あるものの、世間に、これまでとは違うポジティブな波が来ているのは確かだろう。そして、社会や経済が大きく転換する中で起こる、本書で書かれている“AKB48の凋落”は、これからの時代のコンテンツについて考える上で重要な示唆を与えてくれるはずだ。

(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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