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シリアルアントレプレナー・小川浩「Into The Real vol.25」

起業ブーム到来?成功のカギは運、真っ向勝負、力技…映画『007』に学ぶ

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「007 スカイフォール 公式サイト」(ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントHP)より
 現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。『ソーシャルメディアマーケティング』『ネットベンチャーで生きていく君へ』などの著書もある“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。


 スタートアップ(起業)ブームが本当に来そうだ。さまざまな旧型のメディアまでが取り上げ、政府はSNS構築に50億円出す用意があるという(苦笑)。

 日本においても、有能な若者が、大企業を目指す代わりにスタートアップを興すことを目指すような時代が来るのか? あるいは、大企業側も、スタートアップを興したもののうまくいかずに撤退を決意した、有能だが運には恵まれなかった若者の受け皿を積極的に狙うようになるかもしれない。スタートアップなんて成功する確率のほうが遥かに低い。成功要因の多くが運であることは、たいていの起業家が認めている。つまり、企業が若者を採用する際の条件として、トライする勇気と、ある程度の資金調達やサービス開発に成功するくらいの能力を求めることになる。

 ちなみに、『007 スカイフォール』(配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)という映画を観た方はどれくらいいるだろうか? 昨年の12月に日本国内で公開された、ダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドの最新作だ。

 僕は、公開時にすぐ観たのだが、最近DVDでもう一度観た。面白いからDVDを借りてまでまた観たのか? というと、そうではない。オンラインレンタルサービスで、何も考えずに最新作をリストに加えていたために、同じものを頼んでしまった。とはいえ、面白くないことはないので、まだ借りていない人は、ぜひDVDを借りてみてください。

 さて、『スカイフォール』は、なぜか世代交代をメインテーマにした映画だ。ストーリーを明かすことはしたくないので簡単に紹介すると、『007』シリーズ50周年を祝した映画だけに、さまざまな重要な登場人物が交代していく様が多く描かれている。となればボンド役も交代か? と思ってしまうが、ダニエル・クレイグはあと2本の『007』映画の契約を交わしているというから、それはないらしい。

 ただ、本作では、ボンド自身が世代交代の波にさらされている。作中、ボンドは年齢による体力や気力の衰えを周囲から何度も指摘され、イライラしている。実際、拳銃の腕も筋力も落ちていることを、自分自身でもよくわかっている。わかっているからこそ、他人に言われたくない。なじみのある感情だ(笑)。

 彼は負傷から現場復帰した直後に、上司から引退を勧められる。曰く「スパイの現場は若者のゲームだよ」と。

 これは、僕のように数度のスタートアップを経験している身からすると耳が痛い言葉だ。スタートアップもまた、明らかに若者のゲームだからだ。スタートアップ支援のインキュベーターである、Yコンビネーターのポール・グレアムも、大学を卒業して間もない時期が最も起業にふさわしいという。貧乏に耐えるというか、それを当たり前と思えるが、さりとてもはや学生の甘えはない、最適な時期であると。

 30代、40代になると、たいていの人間は家を買ったり家庭を持ったりと、上述の若者たちに比べて、リビングコストは一気に上がって身軽ではなくなる。正直、この世代で新たにスタートアップの世界に身を投じるのは、23歳での挑戦とは桁違いの重い覚悟がいるものだ。常識的な人間であればひるむし、正常な判断力があれば、「まあやめておこう」ということになる。

 若返りを果たしたQ(武器調達チームのリーダーを、劇中では常にこう呼ぶ)は、「能力と顔や若さは関係がない」とボンドに言う。ボンドはこれに対して、こう応える。「創意工夫と若さも関係がない」と。つまり、若くなくても創意工夫、つまりアイデアや新しい発想はできるんだよ、ということだ。

 この台詞の通り、ボンドは若い頃と同じように、老練な裏技や経験によって敵に立ち向かうのではなく、力業で戦った。結局のところ、世代交代を拒否するのなら、あくまで真っ向勝負しかないということなのかもしれない。