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『半沢直樹』ならぬ“半返し”の術〜狼狽する様を演じ、上司に丸投げで抜け道をつくれ!

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「Thinkstock」より
 裏社会を生き抜くためのメソッドをヤクザやアウトローへの取材から抽出し、“表”ビジネスで有効活用することを目的としてまとめた『ブラック・マネジメント』(双葉新書)。その著者・丸山佑介氏が、ビジネスの現場で通用する「ブラック・マネジメント」を解説します。

 今話題のドラマ、『半沢直樹』(TBS系)。主人公が知恵と人脈を駆使して権力者たちに立ち向かい、理不尽なパワハラの恨みを倍返しする。そういうビジネスマンが現実にもいてほしい。もしかしたら可能かもしれない。そんな期待があるから、『半沢直樹』は人気を集めているのだろう。
 
 ところが、実際は「あんなふうに倍返しできたらスッキリするのにな」と思うのが精一杯。倍返しどころか、同等の仕返しですらあり得ない。なぜなら、半沢直樹が立ち向かうような権力者側にいる人たちの圧力は生半可なものではないからだ。

現実の権力者たち、それもきれいごと抜きに、文字通り“人を追い詰める”達人たちが巣食う「裏社会」の権力者が、実際にどうやって追い込みをかけていくのか、ご紹介しよう。

●恐怖の朝会

 最近のビジネス業界では、早起きすることで、浮いた時間を活用して始業前の時間を勉強や趣味、運動などに充てたりすることを通称「朝活」と呼び、推奨する動きにある。実は、裏社会にも「朝活」のような「朝会」がある。とはいえ、生活改善などとは縁遠く、ここで紹介したいのは、むしろ不健康で、より人を追い詰めるためのやり方である。

 とあるアンダーグラウンドな取引で財を成した裏社会の重鎮は、トラブルの相手を朝食会と称した朝会に呼ぶという。そこで実行されるのが、並べられた豪華な御膳に盛られた朝食の前での「沈黙」。何があろうとも、ただひたすら沈黙を守るのである。当然何事も起きず、ただ時間だけが過ぎていき、呼ばれた相手のほうは緊張感に耐え切れずに食事に手をつけようとする……実は重鎮は、この瞬間を待っていたのだ。

「誰が手を出していいと言った!」

 そう言ってブチ切れて見せて、朝食ごと御膳を蹴り倒す。呆然となったところで重鎮の部下が片付けに来て、「明日もお待ちしております」と伝えて朝会はお開きになる。こんなことは一回だけでも耐えられないが、トラブルが解決するまで、毎朝その朝食会が続けられるそうだ。実は人間というのは、いきなり暴力を振るわれるよりも、「予告された暴力」のほうが想像力を膨らませてしまうため、過剰に恐れてしまうのだ。

 これが裏社会の権力者たちの追い詰め方だ。「そこまでするか?」と思う人もいるだろうが、相手の予想の斜め上を行ったほうが勝つのは、ビジネス、正確には権力者のビジネスの鉄則である。そして、こうした追い込みの本当の狙いは、相手の想像力を上回る行動を取ることで恐怖を与えて、思考を停止させるのだ。

 そこへきて朝活の主催者である権力者が多くを語らなければ、情報が極めて限定されてしまうので、余計に想像する恐怖も肥大してしまう。そうなれば「この状況から抜け出すためには、どうすればいいのか?」と冷静に考える隙は与えられず、権力者側からすれば「相手の要求をのむか、のまないか」といった二択に持っていくことができるのだ。

また、早朝というタイミングであれば、外部に助けを求めたりしにくい時間帯であり、選択肢が限定されるので、ほかの抜け道や対策を考えさせることもない。こうした効果に対して権力者の側は食事を用意してただひっくり返すだけなので、別に何日だって続けることができるのである。

●追い込まれ上手なビジネスマンを目指せ

 もし一介のビジネスマン、とくに権力のない人がこうした状況に置かれた時はどうすればいいのか?

 「対抗するのかのみ込まれるのかは、あなた次第」と言いたいところだが、それで終わってはもったいない。どんなことをしても勝ち残るための手法を「ブラック・マネジメント」と呼ぶ。以前に拙著のタイトルにもしたが、裏社会の人たちが法律に関係なく用いるノウハウであり、厳しい現状を乗り切ろうとするビジネスマンにこそ使用してほしいものなので、ここで紹介しておこう。

 先ほど紹介したような既定路線の脅しや圧力は、たとえ狙いが透けて見えたとしても最初から屈してはダメだ。むしろ相手がある程度脅して満足し、溜飲を下げるタイミングを見計らって折れたほうがいい。あまりに理解が早かったり、すぐ折れてしまうと、「なにか裏がある」と勘ぐってくるからだ。策略を巡らす権力者は、自分以外の人間も何か裏のある行動をしていると考えがちだ。それだけに、いかに狼狽する様を上手に見せるかといった追い込まれるスキルが必要になってくる。

 また圧力をかわす手段として、上司に相談して「追い込まれた人」になりきり、上司を巻き込んでしまうのも有効だ。どんなに追い詰められたとしても、自分に決定権がなければ返事のしようもない。「あきらめましょう」と確定的な台詞を口に出して仕事をあきらめるのではなく、あなたの心が壊れそうであることを「もう…ダメです」「私、もう、限界かもしれないです」などと、それとなくアピールするのだ。部下が心を病んだり身体を壊したら、上司が責任を問われることになる。そうなっては、いくら部下のせいにしようとも、取引失敗と部下の管理責任を追及されることになるので、動かないわけにはいかないのだ。

 そのぐらいの理由があれば、中間管理職は動かざるをえないので、決して一人で抱え込まずに決定権のある上司に同行を頼むなり丸投げするなりしてしまおう。嫌がらせの領域に入っている圧力は、自分一人で受け止めてしまうと精神を病むリスクが高い。社内評価を気にしている場合ではないのだ。

 会社員時代、私はある案件でトラブルに見舞われた際、板挟みになることを避けるために上司を同行させたことがある。そうなると相手は格上の人間に話をしようとするので、私は一気に蚊帳の外だ。もちろん帰りに上司からさんざん嫌味を言われたが、交渉の当事者が私ではなく上司を見るようになったことで、だいぶ負担は軽減された。

 権力者に倍返しするのは難しいが、立ち回り方次第で半返し(2分の1に軽減)ぐらいにできる。自分の身を守るためにも実践してみてはいかがだろうか。
(文=丸山佑介、『ブラック・マネジメント』<双葉新書>著者)