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ハウステンボス、なぜわずか3年で再建?澤田社長の筋書き通りに進んだ“宝の山”再生

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●廃業目前

 これに音を上げた野村PFは、ハウステンボス撤退の準備を始めた。09年8月10日、同社は福岡市内で「福岡七社会」(九州電力、福岡銀行、JR九州など福岡の有力企業7社の非公式任意団体、以下七社会)と非公開の会合を開き、ハウステンボスへの経営支援を要請。同時にホテル運営会社で「ホテル再建請負人」と呼ばれる「ホテルマネージメントインターナショナル(HMI)と、ハウステンボスの経営権譲渡も視野に入れた出資交渉を進めている事実を、その場で明らかにした。

 支援要請を受けた七社会は、大方の予想通り9月7日に開いた首脳協議で「株主への説明がつかない」として支援拒否を申し合わせた。HMIも経営権譲渡条件が折り合わないとして10月初旬、佐世保市に「交渉打ち切り」を通告した。テンボス再建がまた振り出しに戻った。

 この間の野村PFの動きを、地元関係者の一人は「撤退に向けた準備だった」と、次のように説明する。

「七社会への支援要請は、お門違いのない物ねだりだった。HMIとの交渉は100億円超といわれた当時のハウステンボスの負債付きだったので、これも無理な交渉だった。要するに野村PFは速やかに撤退するため、初めから成算のない要請や交渉を行い、再建のためにこれだけ努力しましたとのポーズを見せたにすぎない」

 一方、地元自治体の佐世保市にとって、ハウステンボスは重要な観光資源。従業員数は約1000人だが、食材・物販品納入など地元企業の関連を含めると雇用力は3000人を超える。赤字経営とはいえ、地元への経済波及効果は年間350億円を超える。それが03年2月の経営破綻で痛手を受け、その傷が癒えないうちに再び破綻・消滅となれば、連鎖倒産をはじめ、地元経済への打撃は計り知れない。佐世保市自身もテンボス開業以来、計約70億円に上る公的支援金を支出していた。

 危機感を持った朝長則男佐世保市長は、七社会に支援を懇願。10月8日、同会はしぶしぶ「ハウステンボス支援検討チーム」を立ち上げた。それから5回開かれた会合では、いずれも「七社会からの出資は考えられない。採算性がないなら廃業もやむなし」の意見が大勢を占めたという。

 そうして09年11月13日、最後となる同チームの第6回会合が開かれ、この会合で理由は不明だがエイチ・アイ・エス(HIS)への支援要請を盛り込んだ最終案がまとめられ、同月30日、同チームは朝長市長にこの案を伝えた。前出関係者は「朝長市長の懇願の手前、支援を検討したが、はなから七社会は支援する気持ちはなかった。野村PFが手を引くなら、代わりの支援先を東京で探せばいいじゃないかという態度だった」と当時を振り返る。

 こうして、テンボスはHISが支援してくれなければ廃業の瀬戸際に立たされたが、今から振り返ると、これが「ハウステンボス再建への大きな一歩」となった。

●事実上無借金経営を実現した、澤田社長のしたたかさ

 当初、HISへの支援交渉は難航した。同社会長の澤田氏が支援に消極的なポーズを取り続けたからだ。澤田氏は交渉を有利に進めるため、しばしば支援断念を匂わせる発言をメディアにリークした。その度に朝長市長は上京し、地元の窮状を訴え、「支援要請」ならぬ「支援説得」を続けた。七社会が支援要請先として非公式にHISを推薦した10月中旬から12月までの2カ月半の間、「朝長市長が澤田会長と会談した回数は極秘を含めると十数回に上る」(佐世保市関係者)。

 交渉は終始澤田氏のリードで進んだ。その結果、10年1月、HISはテンボス再建支援を公式に表明。同年2月12日、HISはハウステンボスとの間で「基本合意書」を締結した。合意書には「ハウステンボスが125億円の資本金を全額減資した後に行う第三者割当資本金に対して20億円を出資し、かつハウステンボスにHISから経営陣を派遣する。ただし、3年以内に黒字化できなかった場合はハウステンボスから撤退する」と「逃げ道」も周到に盛り込まれていた。

 さらに佐世保市との間でも「固定資産税に相当する『再生支援交付金』(年間8.8億円、総額約73億円)を10年間ハウステンボスに交付する」と、免税の約束も取り付けた。

 それだけではない。澤田氏は朝長市長との交渉と並行して「HISを推薦した責任がある」とばかりに七社会とも交渉。約60億円あったテンボス債務の8割を福岡銀行などの債権者が放棄する約束を取り付けた上、九州電力、西部ガスなど7社中5社から計10億円の出資まで引き出した。

BusinessJournal編集部

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