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第1回 オープンハウス

オープンハウス、CMでなぜ「オペン・ホウセ」?~広告の効果的セオリー戦略の成功例

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オープンハウス テレビCM「引越」篇より(オープンハウス提供)

 20年以上にわたり1000本を超すテレビCMを中心にマーケティング戦略立案に携わってきた鷹野義昭氏が、年間2万本以上オンエアされるといわれるCMについて、狙いやポイントはどこにあるのかなど、プロの視点からわかりやすく解説する。

【今回取り上げる企業】
 オープンハウス

 実力派俳優2人に、やらせてしまいました。そして、言わせてしまいました。

 柄本明織田裕二が犬の着ぐるみを着て登場するCM。柄本犬の鼻の頭は黒く塗られています。激しく動くシッポもかわいいです。

 CMは2匹の犬の会話から展開されます。

織田犬 東京に新築? どうやって?

柄本犬 「オペン・ホウセ」です。「オペン・ホウセ」という会社です。

 直後に「OPEN HOUSE」の看板が映ります。「おいおい、ローマ字読みのまんまかよ」と突っ込んだ人。すっかり企業の意図にはまっています。

 通常、CMにおいて企業名や商品名は、いじらず、正しく伝えるというのが常套手段。ある意味、タブーなことにあえて踏み込んでいます。

 それはなぜでしょうか?

「家を建てる/買う」というのは、恐らく一生のうちで一番高い買い物かもしれません。それを、名前すら知らない会社にお願いするでしょうか? また、知らない会社名を検索することなどあるでしょうか? そう。まずは、名前を知ってもらうことが重要なのです。

 このCMによって、オープンハウスという会社の名前を知った人は結構多いのではないでしょうか。

●認知拡大できなかった従前のCM

 オープンハウスは、このCM放送前には、どんな広告活動をしていたのでしょうか。2012年11月からオープンハウスのブランドで本格的に始まったテレビCM展開。その内容は、沢田研二が歌っていた「TOKIO」の曲に乗った替え歌もの、翌年には織田裕二が単独で出演するものと、いずれも「東京に家を持とう」ということに重点が置かれ、オープンハウスのブランド認知拡大には少々遠いものでした。

 一般名称のような、そして特に個性もないオープンハウスという企業名。少ない出稿量で、効率良く記憶に残すため、打って出たのがアテンションを高めるフックづくり。

 大御所タレントと契約したのですから、カッコよく出てもらいたいと思ってしまうのが広告を出す企業側の常です。さらに、せっかく多額の費用を掛けるのだから、あれも言いたい、これも伝えたいと思い、盛りだくさんになりがちです。

 しかし、今回のCMでは、よくぞ勇気をもって方針を転換し、言いたいことを削ぎ落としたものです。マーケティング・セオリーである「One CM,One Message」の好例。また、ここまでの演出を大御所タレントにのませたのもアッパレです。

 名前を覚えてもらうということが最重要課題である認知ステップの「導入変動期」。その中で、ブランド(企業)の認知度を上げた今回のCM。しかし、第1段階をクリアしただけでは、商品の売り上げにはなかなかつながらないものです。

 それでは、中・長期的に考えられたコミュニケーション戦略とは、どのようなものでしょうか?

 今後、イメージ醸成に舵を切るのか? 品質訴求を付加するのか? はたまた現在の企業名認知拡大のダメ押しをするのか? それもこれも、自社のポジションを知るための客観的なマーケティングリサーチに基づいての判断になることでしょう。

 インパクトを重視した面白CMの後だけに、企業戦略としてこれからの展開が楽しみです。
(文=鷹野義昭/CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター)

●鷹野義昭(たかの・よしあき) 
株式会社テムズ http://www.tems.ne.jp/index.html
代表取締役  <CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター>
1963年、長野県小諸市生まれ。大手広告代理店を経て、90年より現職。
テレビCMを中心としたマーケティング戦略立案に携わり25年。1000素材を越すテレビCMの戦略策定・分析・広告効果測定の実績を持つ。
主な著書に『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎 ‐明日からテレビCMがもっと面白くなるマーケティング入門‐』(ビジネス社)などがある。