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柳谷智宣「気になるITトレンドの“裏”を読む」(第11回)

ビットコイン、なぜ大暴落で崩壊の危機?“単なる情報”仮想通貨の価値と付き合い方

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「Thinkstock」より
 PCデビューは30年前に発売されたシャープのX1という、筋金入りのデジタル中毒であるITライターの柳谷智宣氏。日々、最新デジタルガジェットやウェブサービスを手当たり次第に使い込んでいる。そんな柳谷氏が、気になる今注目のITトレンドの裏側とこれからを解説する。

 インターネット上の仮想通貨ビットコインは2009年に登場した。政府や中央銀行などは関与しておらず、サトシ・ナカモトという正体不明の人物がつくり上げたシステムだ。ビットコインはPCでプログラムを走らせて一定確率で獲得できるほか、株や為替のようにトレードして獲得することもできる。

 仮想通貨のメリットは多い。決済手数料が低く、異なる国でも両替する必要がない。実際、海外企業と取引をする際に利用しているところもある。これらのメリットをメディアが喧伝した結果、ビットコインの価値が急騰。3年前のレートでは1ビットコインは1円以下だったのだが、昨年には12万円にまで上がった。上手く売り抜けられた人は膨大な利益を手にしたことだろう。

 しかし、ビットコインの持つ高い匿名性により、マネーロンダリングや資産隠しに使いやすいことから各国政府が介入を始めた結果、昨年12月18日に大暴落を引き起こし、価格は半値になってしまう。今年1月18日には、違法薬物の密売サイトが摘発され、そこで利用されていたビットコインが押収された。なんと14万4336ビットコインという膨大なもので、当時の価値で125億円相当。米連邦捜査局(FBI)は、このビットコインの処分方法を検討している。ちなみに、摘発された人物が所有していたビットコインの量は、サトシ・ナカモトに次ぎ世界第2位であった。

 2月24日には米国セキュリティ企業がウイルスに関する発表を行った。ビットコインを不正に盗まれるウイルス「ポニー」が爆発的に広まっているというのだ。数十万台のPCに感染し、ビットコインを管理するウォレットが盗まれたのだ。

 ビットコインはP2P(ネットワークに接続されたPC同士が直接通信を行う方式)ネットワークで強固に守られているのだが、やはりまだ成熟された技術ではなく、クラッカー(悪意を持ってハッキングを行う者)のおいしい攻撃対象になっている。なにせ成功すれば換金性の高いビットコインが手に入るため、実際に大規模な被害も起きている。

●損なわれた信頼

 そして2月25日には、ビットコイン取引所の大手・Mt.Gox(マウント・ゴックス)のホームページがダウン。翌26日に取引を停止するというテキストが表示されるようになった。実はMt.Goxがマルウェア(悪意あるソフトウェアやコード)に攻撃されて、75万ビットコインを盗まれているとみられている。現在の価値で400億円という膨大な被害で、市場に与えるインパクトは大きい。

 仮想通貨は裏付けのない単なる情報だ。なぜこれが価値を持つかというと、ビットコインをお金代わりに使えると期待できるから。それを受け取って対価を渡す人も、ビットコインを信頼している。しかし、一連の事件によりビットコインの信頼性は大きく損なわれた。今のところ、大量のビットコインを保有している人たちが市場の維持に力を入れているため、ビットコインの価値は下げ止まりしているが、政府の締め付けが強くなれば、そう遠くないうちに崩壊することだろう。

 しかし、一攫千金を狙う人たちは今でもビットコインに群がり、もう少し先を読む人たちは、新しい仮想通貨を開発して広めようとやっきになっている。どうしても仮想通貨に類するモノに手を出したいなら、誰よりも早く、小遣い程度で始めること。その通貨がメディアに出始めたら売り時、盛り上がり始めたら逃げ時。欲を出すほど大損するということを心がけたい。
(文=柳谷智宣/ITライター)