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吉田潮「だからテレビはやめられない」(4月21日)

「ドラマのテレ東」黄金時代到来の予感?業界のオキテや暗黙の了解は、一切気にせず?

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『マルホの女 保険犯罪調査員』公式サイト(「テレビ東京 HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 今クール(4~6月期)の連続テレビドラマは全体的に面白い。映像が超カッコよくて、目を見張るものもあれば、まっとうに演技できる俳優が本来存在するべきところに存在している、そんな印象だ。警察・刑事モノが多いのには辟易するが、これこそ「ドラマの群雄割拠」となるワケで。各局が設定やキャラクター、背景、セリフにこだわりをもって、さぞや差別化して見せてくれることであろうと期待している。

 で、「おや?」と思う意外な連ドラがこっそり始まった。最近、俄然目が離せないテレビ東京のドラマである。名取裕子&麻生祐未の珍しいコンビネーションがどうにもこうにも気になる『マルホの女 保険犯罪調査員』である。人気を博した前クールの『三匹のおっさん』と同じ、毎週金曜夜7時58分の枠だ。

 保険会社の調査員とは、保険金を支払うべきか否かのジャッジ&レポートをする職業だ。名取は個人資産38億円というセレブな暮らしをしながらも、ある目的のために日本で保険調査員をしている役どころ(以前は海外生活)。テレビ朝日の出演ドラマで築き上げた「猪突猛進&人情派のオバサン」イメージはまったくない。理詰めで相手の急所を突く、合理的な思考の持ち主であり、極度の潔癖症。常に小さなホウキとチリトリを持ち歩き、食べ物のカスがテーブルの上に散らかるのが許せない。その名取とコンビを組むのが、元暴走族のレディース総長だった麻生。ガサツ&ザッパー(大雑把)、無頓着で無神経。世間体の悪さをまったく厭わない節約家だが、姉御肌かつ優秀な調査員である。

●新鮮なミスマッチ感

 正直、物語自体はベタなつくりでもあり、水と油でまったく合わない迷コンビが繰り広げる「よくあるタイプの事件簿」ではある。ただ、このふたりのキャラクターが「意外に新しいなぁ」と思わせてくれた。名取はそもそも理知的な顔立ちで品のある女優だが、神経質な役は意外と少なかったように思う。タブレットを駆使し、科学的根拠のある調査法を用いて、ドヤ顔&高圧的に事件を追う。名取がタブレット……名取がデジタル化&IT化……このミスマッチ感。いつまでもガラケーとファクスを使っていてほしかったと願わないでもないが、ちょっと新鮮だった。

 一方、麻生が元レディース。これもまた新しい。楚々とした神経質な役や、ぼんやりふんわり奥様といった雰囲気が強かったのだが、よりによってガラッパチな元ヤン。居酒屋でなく、後輩(LiLiCo)の実家である酒屋の倉庫のようなところで、魚肉ソーセージを頬張りながら酒を飲む麻生。貧乏くさいけど、しっくりくる。逆に、なんだかうまそうである。元暴走族で現在は民間科捜研勤務の近藤芳正を顎で使い倒す麻生。随分インテリが多い族だったんだなぁと皮肉を言いたくもなるが、後輩役のLiLiCoが「ちょっとバカだけど従順な下僕」を好演。LiLICoを外国人枠から外して、元ヤン枠にエントリーさせた手腕は見事。

 つまり、キャスティングがすべて、意表を突く作品でもある。業界のオキテとか暗黙の了解とか守るべき慣例とか事務所の横やりとか、テレビ東京はもしかしたら一切気にしなくてもいいのかもしれない。私の想像力が足りず、枠にハメて考えていただけなのかもしれないが、「そうきたか!」と素直に驚くことができた。近々、滝藤賢一主演ドラマも始まることだし、「ドラマのテレ東」と呼ばれる黄金時代がきているのだ(と思いたい)。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。