最近、無料通信・メッセージアプリのLINEをめぐる記事が目立つが、それは4月1日に登録ユーザーが世界で4億人を突破し、LINEの森川亮社長兼CEOが登録ユーザーを「来年には10億人以上にする」と宣言したことが一因だろう。
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/4月19日号)の特集『LINE全解明』では、今年中に上場することが市場の合意になっているLINEの戦略に迫っている。これまで、上場後は北米に進出する戦略だったが、2月に米大手SNS・Facebookがヨーロッパを中心に4億6500万人の月間アクティブユーザーを持つモバイルメッセンジャーアプリ・WhatsAppを190億ドル(約1兆9300億円)で買収。このままでは、単独での北米進出は難しく、上場どころか、LINEのようなアプリを欲するソフトバンクと組まざるを得ないのではないか、との観測も出ている。
今では「1兆円以上の企業価値が見込まれる」ともいわれるLINEだが、サービス自体は無料で、最も大きな収益源は2012年7月にスタートした「LINEゲーム」。これが全体の売上高の6割を占めている。「これまでに54タイトルを出し、その6割がダウンロードランキング(iOS)でトップ5に入るほど人気だ。そこからゲームを有利に進めるためのアイテムなどの課金収入で稼いでいる」という。
また、「ゲームのみならず、電子書籍や写真、占い、ニュース、ネット通販などゲーム以外に73アプリも投入。それらの収益は世界でトップクラスとあって、ゲーム以外の『底力』がある」と評価しており、全体の2割ほどを占める広告収入も伸びていると分析している。
「企業が公式アカウントを開設し、無料スタンプを提供するには数千万円もの費用がかかるものの、消費者の反応が既存のSNSと比べて桁違いによく、需要が高まっている」「特にスタンプは『平均で数百万ダウンロードは出る。9月までの広告枠はすべて埋まっている』(執行役員)と活況だ」という。
LINEで注目すべきは、意思決定のスピード。「計画に縛られてしまうので3カ月より長いもの」はつくらないために、事実上、年間計画がないのだ。
今後は広告・マーケティングツールだけでなく、システム開発の面で法人市場を狙う。「すでにネット予約やオンラインバンク、企業の勤怠管理などさまざまなサービスを行えるよう企業とシステム連携を進めている」という。
●二分されるLINEの評価
ところが、LINEをポジティブに紹介した「週刊ダイヤモンド」に対して、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/4月26日号)は『LINEの死角』という巻頭特集でネガティブに報じている。
「一段と成長が加速している。2011年6月に誕生したLINEは、今や登録ユーザー数が4億人を超えた。だがゲームや広告事業では、周囲との軋轢も生まれている。絶好調LINEの盲点に迫る」という内容だ。
「週刊ダイヤモンド」ではほとんど触れられていないが、「週刊東洋経済」によれば、LINEは今月、新体制に移行し、事実上、韓国の親会社による支配が強まったという。