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国債超低金利の8月転換説、なぜ広がる?生保は金利急騰に備え売却体制、巨額評価損も

文=島野清志/評論家
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国債超低金利の8月転換説、なぜ広がる?生保は金利急騰に備え売却体制、巨額評価損もの画像1明治安田生命保険本社ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)
「転換点が近づいている印象はある。メディア向けの公式コメントはともかく、内心ではそう感じている担当者、ディーラーは多いのではないか」

 債券市場に通じる金融関係者は言う。転換点とは超低金利のまま凪のように安定している債券市場(国債)が一転して波乱に見舞われる、要するに国債の価格が急落、金利が急上昇する局面を指す。こうした市場関係者らの懸念を裏付けるように、日経新聞4月24日朝刊は次のように報じた(以下、一部抜粋)。

「明治安田生命保険は23日、大量に保有する日本国債の価格が下がって長期金利が急騰する事態に備えて国債のリスク管理を強める方針を明らかにした。4月から市場や経済・財政の34の指標を毎月点検し、金利急騰の予兆が見られる場合は早期に日本国債を売却する体制を整えた」

 同記事によれば、住友生命も国債購入の規模を前年度より落とすという。

 これまで国債の安定した買い手であり、保有者だった大手生保の宗旨替えとも受け取れるが、需給面から買い手の減少は価格の下落(金利の上昇)を招きやすく、また巨額の資金を長期で運用する、言い換えれば鷹揚なタイプの投資家である大手生保のスタンス変更は、他の金融機関への影響力も大きい。

 もとより、「景気回復は金利上昇を促す」という経済の原則に従うのならば、10年物国債の利回りが0.06%前後と未曾有の超低金利水準で落ち着いているのは異様ではある。景況は明らかに好転している。円安、株高は定着し、企業業績も総じて堅調だ。ベア(定期昇給)を復活させる主要企業も少なくない。長く懸案だった雇用情勢も改善して業種によっては深刻な人手不足の状況にある。都心を歩けば高層マンション、オフィスビルの建設、リフォームラッシュ。もはやネオバブルと呼んでも良いのかもしれない。それにも関わらず、金利は反応せず、ひたすら底這っている。

 これも日銀が国債を大量に購入して超低金利を半ば固定化させているためだが、果たしてどこまで維持できるか保証はない。無制限に買い続ければ日本国債の信認に疑問符が付き、格付けの引き下げや価格下落を誘発しかねない。

●国債価格下落、金融機関の経営を動揺

 前出の金融関係者は転換点について「早ければ今年8月」と指摘する。8月中旬に消費増税後はじめてのGDP(2014年第2四半期・4月~6月)速報値が発表されるためだ。「市場の予測より数字が悪ければ来秋の2度目の消費増税実施が微妙になって財政再建に黄信号がともり、日本国債の信用が揺らぐ」(同)。想起されるのは1980年に市場を震撼させたロクイチ国債の暴落であろうか。ロクイチ国債暴落の要因は国内のインフレ(物価上昇)進行、米国、西ドイツなど主要先進国の金利上昇、為替の円安基調、そして大量発行される国債への市場の拒絶反応とされており、現在と環境はかなり似通っている。

 参考までに取引の中心である新発10年国債の金利が今後上昇した場合、価格が理論上どの程度下落するかを試算してみよう。

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