俳優の妻夫木聡さんが出演するサッポロ生ビール黒ラベルの人気CM「大人エレベーター」は、第一線で活躍する芸能人やアーティストたちが、「大人とは何か」について語るという内容で、好評を博しています。妻夫木さんが架空の大人エレベーターに乗り込み、階数と同じ年齢の大人たちに出会い、彼らと「大人」という存在について語りあいます。
『大人エレベーター』(扶桑社/刊)には、これまでのCMのフリートークが完全収録されています。下は25歳(当時)の横綱白鵬関から、上は77歳(当時)の仲代達矢さんまでそれぞれの大人論が展開されています。今回は本書からその一部をご紹介します。
■「大人とは、子どもの想像の産物」(リリー・フランキー)
46階で妻夫木さんを待ち受けていたのは、リリー・フランキーさん(2010年のCM放送当時46歳)。作家業から俳優業までマルチな活躍をするリリーさんは、男性だけでなく、女性からの支持も高い。
そんなリリーさんは大人を「子どもの想像の産物」、つまり「子どもがつくった『大人』っていう架空の生き物だ」と語ります。これには妻夫木さんも「あの頃思い描いていた通りの大人になろうとしたら相当ストレス溜まる」と納得。そこからリリーさんの大人論はどんどん深みを増します。
リリーさんは「人にどう見られたいという自意識はどんどん薄くなる」と語り、それは大人とは想像の産物だと気づいた瞬間からうまれる感情かもしれないと言います。「大人にならなきゃ!」という強迫観念をもっているうちはまだまだ子ども。もしかしたら、そのことに気づくことが、「大人」への一歩なのかもしれません。
■「生きるとは、恥をかく回数だよね」(高田純次)
64階では、2011年のCM放送当時64歳だった岸部一徳さんと高田純次さんが登場。
2人は30歳前後でそれぞれ大きな人生の転機を迎えたという点で共通しています。岸部さんは在籍していたザ・タイガースから脱退し、俳優に転身。一方の高田さんはジュエリーデザイナーをやめて劇団東京乾電池に合流。「30代の時って意外と揺れ動くものなのよね」(高田)「30代はお金なくても全然平気でしたよね」(岸部)と当時を振り返ります。
そして、64歳になった今、「生きる」ことについてどう考えているのか。高田さんは「生きるとは、恥をかく回数」だと言い、「残り少ない人生でいくつ恥をかくか、どう乗り越えていくか、それだけのような気がする」と述べます。そして、その高田さんの言葉に呼応して、岸部さんも「だからこそ、ひとりではしんどいね。生きるためには誰かがやっぱり必要」と語り、人は助け合って生きているということを2人で再確認します。