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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

遺伝子組換え食品、非表示で流通の恐れ 秘密裏で米国から圧力、支離滅裂な政府の説明

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 また、日本のTPP正式参加(2013年7月23日)前の12年3月に発表された「TPP協定交渉の分野別状況」【編注6】のTBT項目に、「GMO(遺伝子組換え作物)やそのラべリング(表示方法)、自動車についての提案はない」と書かれている。この点からも、遺伝子組換え食品表示問題は、SPSではなくTBTで扱われると見なしてよい。

矛盾する政府

 同説明会で内閣審議官は、SPS協定とTBT協定について、いずれも「WTO協定の付属書の一つとしてSPS協定(あるいはTBT協定)があり、TPPでも大枠としてはそれを踏まえたものとなっている」「食の安全に関する(SPS協定)、あるいは食品の表示要件に関する(TBT協定)、我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていない」と説明した。これは、衆参両院決議との関連を意識したものかもしれない。

 実は、安倍政権がTPP参加表明後の13年4月、衆参両院の農林水産委員会がTPP交渉参加に関する決議(衆参同文)をし、特に「残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務(中略)等において、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと」とした。

 いずれにせよ、具体的な議論の経過や理由などの説明が一切なく、ただ一刀両断するかのように、「変更は求められていないから安心を」といわれても、素直にはうなずけない。ましてや、内閣審議官から次のような“牽制球”を投げられても、ピンとこない。

「遺伝子組換え食品については、わが国ではこれを表示するということになっている」
「なぜか、TPPに反対される方は常に『アメリカから(表示を)やめてしまえ』と言われるのではないか、と言う」
「これ(TPP)も、WTOの付属書、TBT協定に準拠しており、(中略)日本が遺伝子組換え食品の表示制度をまったく変えるということにはならない」

 この言葉を額面通りに受け取れない理由の一つは、日本の交渉参加前のいずれも13年4月12日付「日米協議の合意の概要」【編注7】と「駐米日本大使発書簡」(日本国大使 佐々江賢一郎)、そして「米国通商代表代行発返簡」(米国通商代表代行 デミトリオス・マランティス)の3つに、次のような同じ文章が綴られているからだ。

「日本及び米国は、世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に基づいて並行二国間交渉の中で衛生植物検疫措置に関する事項について共に取り組む」

米国の意思

 もう一つ気になるのが、TPP交渉加速のためにオバマ米大統領が求めているTPA(大統領貿易促進権限)法案をめぐる動きだ。米上院では5月半ばにいったん否決されたが、5月22日に一転して賛成多数で可決され、下院での採決が注目される。米国では議会が貿易交渉について強い権限を持つが、TPA法は大統領にその権限を与える。ただし、TPA法に貿易交渉の目的を詳細に書き、大統領にそれを実行させる仕掛けだ。

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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