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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

遺伝子組換え食品、非表示で流通の恐れ 秘密裏で米国から圧力、支離滅裂な政府の説明

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 問題は、今回の貿易交渉の目的の一つとして、遺伝子組換え表示の撤廃が示されている点だ。

 実は、昨年2月の参議院予算委員会【編注8】で、農業関連では内容が今回の法案と同じと言われるTPA法案について、紙智子議員(共産党)が質問した。

「バイオテクノロジー、すなわち遺伝子組換え技術に影響を与えるような表示や制限義務を撤廃するとしている」

 これに対し、安倍晋三首相は遺伝子組換え表示には一切触れず、次のように明確な回答を避けた。

「基本的には、今この中身そのものではなく、TPAについて国会議員からこの法案が提出された(米国では議案を出すのは政府ではなく議員)、(中略)米国政府がしっかりとこのTPP交渉について権限を持って進めていきたいという意欲の表れではないか」

 さらに、もう一つ気になるのは、TPP交渉参加前に外務省が「慎重な検討を要する可能性がある主な点」としてまとめた文書だ【編注9】。「TBT(貿易の技術的障害)」の項目に、こう書いてある。

「仮に個別分野別に規則が設けられる場合、例えば遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国にとって問題が生じる可能性がある」

注目される裁判所の判断

 折しも、「TPP交渉に関する説明会」が開かれた5月15日、山田正彦氏(民主党政権時の農林水産大臣)と岩月浩二弁護士の2人が、国を相手に「TPP交渉差止・違憲確認等請求」のために東京地方裁判所へ提訴した。訴状は「TPPは、国民の生命や自由を侵害する恐れが極めて高く、日本国憲法の基本的人権に関する諸規定に違反します」としている。さらに、こう指摘する。

「TPP交渉は、異例の秘密保持義務を課した交渉であり、極端な秘密交渉となっています。国民生活に深刻で重大な影響を及ぼす条約であるにもかかわらず、国民も国会議員もその内容を知ることができません。(中略)憲法の規定(憲法73条3号。内閣の職務=条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする)に違反します」

また、遺伝子組換えについては、こう指摘している。

「米国は、この遺伝子組換え食品の表示が、米国産の遺伝子組換え作物の輸出を妨げているとして、強く異議を唱えています。(中略)TBTルールの厳格な適用によって、廃止される可能性が少なくありません」

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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