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歪んだ「新築住宅信仰」 なぜ良質かつ安価な中古住宅は普及しない?悪しき慣習と制度

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「Thinkstock」より
 日本は「新築住宅信仰」が強いとされます。実際に住宅流通データを見ると、住宅流通総量に占める中古住宅の割合は約20%を切る一方、新築住宅が80%を占めています。これが欧米になると比率は逆転して中古住宅が80%であり、欧米では住宅を取得する際に「中古を買うのが当たり前」なのです。筆者の知人のアメリカ人にその理由を聞いてみると、彼はこともなげにこう答えました。

「当たり前じゃないか。中古住宅なら人が一度住んでいるから、良し悪しの履歴がわかって安心。新築なんて、どんな瑕疵が隠されているかわからないからリスクが高い」

 では、日本ではなぜ新築住宅ばかり買われるのでしょうか。日本人の特性なのでしょうか。その理由を考えるためには、日本の住宅事情の歴史を振り返る必要があります。

「質」を重要視してこなかった代償


 戦後の日本は住宅が「圧倒的に不足する」時代からの出発でした。戦災復興院の試算によれば、空襲などによる焼失が210万戸、戦時中の供給不足が118万戸、海外からの引き揚げ者の需要が67万戸、疎開などによって取り壊された住宅が55万戸で計450万戸。一方、戦死者等による需要減が約30万戸。差し引きで約420万戸の住宅が不足しているといわれました。

 これほどの住宅不足からの復興に当たって大きな役割を負ったのが、日本住宅公団(現UR都市機構)でした。公団は都市郊外部を中心に「羊羹型」の団地を次々に開発。地方から都会に出てきて働く勤労者のための住宅を供給しました。部屋の広さは約40平方メートル台。部屋はどれも和室が中心で、お茶の間の中央に卓袱台が鎮座し、家族は卓袱台を囲んで白黒テレビに見入りながら食事をする。そして隣接する寝室で布団を並べて寝る。これが公団住宅に住む日本人の典型的な生活スタイルでした。

 公団を中心とした住宅供給はやがて民間業者の成長とともに量的な拡大を続けた結果、総住宅数が世帯数を大幅に上回るようになり、現在は約5500万世帯に対する住宅総数は6063万戸にも及んでいます。日本の住宅は「量的な充足」を満たし「質的な充足」を求める時代となっています。

「質が良い住宅は常に新築住宅」という考え方が日本人の間にまだ根強いのは、こうした戦後ひたすら住宅の「量的な充足」を満たすために「質」を重要視してこなかった代償なのかもしれません。

新築住宅ばかりに目がいく理由


 現在の住宅、特に平成以降に建築された住宅は十分に良質であり、耐震性も確保され、中古住宅として取引されるには十分な資質を備えているものと考えられます。一般的に新築住宅は土地代、建物建設費という原価に加えて約30%の間接費用(土地の取得や建物建設に伴う関連費用、モデルルーム設置、販売員の人件費などの販売コスト)が加わっています。中古住宅に比べて、はるかに「高コスト」の商品なのです。