タワーマンションが人気です。2011年に東日本大震災が発生した直後には一時的に売れ行きが下がったものの、人気は急回復。都内湾岸エリアを中心に、ターミナル駅前や大型工場の跡地に続々と建設されています。
タワーマンションという言葉の定義は存在しません。不動産経済研究所のデータでは、地上20階以上のマンションを「超高層マンション」としています。この定義に従えば、2004年以降首都圏(一都三県)で供給されたタワーマンションは525棟、約15万8000戸となっています。
一方で、この期間に新たに供給されたマンションは62万1000戸です。なんと首都圏でここ10年余りの期間で供給されたマンションの25%、4戸に1戸がタワーマンションということになります。
かつてタワーマンションは超高級マンションの代名詞。圧倒的な眺望と贅沢な共用設備を売り物に一般庶民にはなかなか手の届かない存在でした。しかし、いまや新しくマンションを買う人の4人に1人がタワーマンションオーナーです。タワーマンションとしての希少性は薄くなり、もはや一般的なマンション形態になったともいえるでしょう。
このように人気のタワーマンションですが、将来に向けて気を付けなければいけない事象が2つあります。「修繕維持費用の不足」と「区分所有者の所有目的、人種等の違いによるコミュニティ維持の困難さ」です。
跳ね上がる管理費
タワーマンションの修繕積立金は、どのようになっているのでしょうか。
神奈川県川崎市内で分譲されたあるタワーマンションの事例で考えてみましょう。このマンションは階数で50階を超える超高層のタワーマンション。各住戸の面積は55平方メートルから70平方メートル、価格は6000万円台から7000万円。坪当たり単価300万円を超える高額物件です。
このタワーマンションの管理費は1平方メートル当たり216円。修繕積立金は同87円です。70平方メートルの住戸で戸当たりの負担額は管理費が1万5000円、修繕積立金が6000円。月額合計が2万1000円ということになります。ローンの支払いはきついものの、月々の管理費は駐車場使用料もあわせて約4万円程度。なんとかなる範囲の方もいるでしょう。
ところが、これにはちょっとしたカラクリがありました。修繕積立金は築年数の経過とともに自動的に上昇していく仕組みとなっていたのでした。スタート時点で87円だった1平方メートル当たり単価は5年後に2.5倍の217円、10年後347円、15年後には420円。当初設定金額の4.8倍です。70平方メートルの住戸で6090円だった修繕積立金が2万9400円にまで跳ね上がることになります。管理費、駐車場使用料とあわせて15年後には6万円を超える負担があらかじめ決定されているのです。