4月28日、米国ピッツバーグ大学医学部のほか、英国、フィンランド、南アフリカ、オランダの国際研究グループが、オンライン科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」にある研究結果を発表しました。
南アフリカの農村地域では、大腸がんの発生率は1万人あたり5人未満。一方、アフリカ系米国人は1万人あたり65人にも上ります。その原因は食事にあると考え、そこにスポットを当てたのです。研究グループは南アフリカの農村地域の住民とアフリカ系米国人それぞれ20人(50~65歳)ずつに協力してもらい、施設に宿泊して食事のパターンを逆にしたのです。南アフリカの農村地域の人々には低繊維、高たんぱく、高動物性脂肪の食事を食してもらう一方、アフリカ系米国人には高繊維で低たんぱく質の食事を食してもらったのです。そして、前後で便と共に大腸内視鏡で腸の中を調べました。
すると、わずか2週間にもかかわらず、米国人は腸内の炎症レベルが低下し、何よりがんのリスクと大いに関係がある化学物質が低下。となると、気になるのは南アフリカの農村地域の人々の変化。予想通り、がんに関係する計測値が明らかに増加したのです。
わずか2週間でこの結果が出たのです。高繊維で低たんぱく質の食事をこのまま続けると、明らかに大腸がんの減少に結びつくと思われます。50代に突入したアメリカ的食事をしてきた日本人も、今からでも遅くはない。すぐにかつての和食文化を思い出して、各家庭がそれを実行すると大腸がんは確実に減らせるはずです。
このような信頼度の高い研究報告がなされたのですから、厚労省はもっと積極的に食事の見直しを提案すべきでしょう。このままいくと大腸がんで亡くなる人々が右肩上がりになることが予想されます。大腸内視鏡検査も当然大事ですが、まずは食事の見直しではないでしょうか。これを勧めると確実に大腸がんの罹患者、そして死亡者を減らせると共に、生活習慣病も減少に向かうことでしょう。
(文=松井宏夫/医学ジャーナリスト)