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小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」

東芝、歴代3社長を提訴 内向きな名声レースの末路 常識離れした「東芝の常識」

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東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)
 不正会計問題に揺れる東芝は7日、2015年4~9月期連結決算の営業損益が904億円の赤字になると発表した。同社の上期が営業赤字となるのは6年振り。さらに同日、同社は西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長とCFO(最高財務責任者)2人に対し、計3億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 本連載の前回記事では、世間を騒がせた東芝の不正・粉飾会計事件に関する不可解なマスコミや業界、政府の対応を検証したが、今回は東芝内部の動きについてみていきたい。そもそも「天下の東芝」が、なぜかくも子供じみた不正経理を行ったのか、その理由を合理的に類推してみたい。

世間の常識が及ばない


 まず考えられるのは、東芝に象徴される「サラリーマン社長」を頂く一流大企業の病理である。経営コンサルタントの大前研一氏も指摘しているが、サラリーマン社長は任期を終えて引退しても自社に間接的影響力を残すが、会長職となり本業とは距離を置き、専任スタッフを抱えてコストのかかる財界活動などに勤しみ、「専用車」「個室」が維持されることが暗黙の了解となっている。辞任した東芝の歴代3社長は、今回の事件の責任を取って辞任した後でさえもこの3つの厚遇を引き続き受けていたという(9月21日付「産経ニュース」記事より)。

 東芝という企業が社内しか見ていないとしか思えないこの感覚は、世間の常識の及ばないところである。創業社長・会長の多くが財界活動から距離を置いているのとは対照的である。もうひとつは、叙勲であろう。叙勲の要件は、主に70歳以上の者を対象に「一般的に個々の活動が長期にわたっていること」とされているので、社長を退任後も会長、相談役として企業になるべく居残る動機が存在するようだ。いずれにしても、表向き本業を外れた由緒のある一流大企業の社長にとって、社外活動はとても重要なものであるようだ。

 社長退任後の社外活動の中心は財界活動であり、その頂点は経団連であろう。なかでも、戦後の東芝を立て直した石坂泰三・土光敏夫の両氏が経団連会長に就任し、その後は1980年の佐波正一氏以降、13年の佐々木則夫氏まで歴代の東芝社長は経団連副会長に就任していることをみればわかるように、東芝社長にとって経団連の要職を務めるのが当然であった。

 特に、パソコン事業を立ち上げ辣腕で知られた西田氏は、会長への就任と前後する2009年5月に経団連副会長に就任する。第三者委員会の報告書にもあるように、この前後から「チャレンジ」と呼ばれる利益のかさ上げなどの不正会計がその後、佐々木氏、西田氏の影響が強い田中氏の社長時代まで常態化している。