年明け以降、世界的な株安に歯止めがかからない。中国経済の減速懸念、原油安や中東情勢の緊迫化、北朝鮮の核実験などが足を引っ張り、日経平均株価は年初から6日連続値下がりで、その幅は一時1400円を超えた(終値ベースでは1335円安)。大発会から6日連続して下げるのは戦後、東京証券取引所で取引が再開されてから初めてである。
カジュアル衣料「ユニクロ」を中心に国内衣料市場で1割のシェアをもつファーストリテイリング株は売り一色。1月7日には一時、3万9010円まで下げ、昨年来安値を更新した。終値は前日比1120円(2.79%)安の3万9050円で4万円の大台を割った。8日も瞬間的に1960円安(7.0%安)の3万6180円まで急落、結局910円安の3万8140円で引けた。株価の崩落にまったく歯止めがかからない。15年の高値である6万1970円(2015年7月30日)から半値近くになった。
会長兼社長の柳井正氏は年頭所感で、20年の売上高5兆円の達成に向けて、「過去の成功は捨て去れ」と社員に檄を飛ばし、「従来のやり方の延長線上にチャンスはない」と述べた。
ファストリは15年11月26日、山口市の本社で定時株主総会を開いた。柳井氏は檀上で改めて「20年に売上高5兆円をぜひやりとげたい」と強調したが、質問に立った株主からはその実現性について懸念の声も上がった。
15年10月8日に発表した15年8月期の同社の連結決算(国際会計基準)は、営業利益が会社予想を350億円下回る結果となった。売上高に当たる売上収益は前期比21%増の1兆6817億円、営業利益は26%増の1644億円と共に過去最高を更新したが、会社の見通しやアナリストの予測を大幅に下回った。
これを受け、翌9日に株価は急落。下落率は取引時間中に一時10%を超え、下げ幅は4740円となった。時価総額は一瞬にして5000億円が吹き飛んだ。この日、売買代金(1115億円)、値下がり率(9.74%)ともに東証1部でトップ。日経平均株価を1銘柄で180円以上押し下げた計算になる。
表面上は過去最高益なのに株価が急落したのは、持続的成長を続けると期待されてきたユニクロのビジネスモデルに陰りが出ていることに、投資家が失望したからにほかならない。想定外だったのは、米国事業の赤字幅が拡大したことだ。米国はファストリが最優先市場と位置づけるアパレルの世界最大マーケットである。ユニクロを40店以上展開する。しかし、ブランドの認知度は上がらず、来客数が低迷。赤字幅が拡大し33億円の減損を計上した。12年に買収した高級ジーンズのJブランドも51億円の減損を出すなど、不振を極めた。