そこで、16年8月期の通期見通しを下方修正した。売上収益は前期比7%増の1兆8000億円、営業利益は9%増の1800億円、純利益は横ばいの1100億円。従来予想からそれぞれ1000億円、200億円、50億円、減額修正した。
15年11月、ファストリは東レと高機能繊維を使用した衣料品の売り上げが5年間で1兆円を目指す契約を結んだ。両社は06年に提携し、5年の長期計画に基づき機能性素材ヒートテックを開発しヒットさせてきた。発熱・保温機能を持つヒートテックを使った衣料品はユニクロのドル箱となった。11~15年は当初想定の4000億円を大きく上回り、8000億円を売り上げた。16~20年の取引額は累計で1兆円を超える見通しだ。
ネット通販に活路
ファストリが売上高5兆円を達成するための切り札と考えているのは、電子商取引(EC)事業の拡大だ。15年10月8日、東京都内で開いた15年8月期の決算説明会で同社は、「グローバルでインターネット経由の売上高を、3~5年で足元の5%から30~50%に引き上げる」とぶち上げた。ITと実店舗を結びつけ、いつでもどこでも買えるオムニチャネルの構想はこれまでも口にしてきたが、具体的な数値目標と達成時期を明言したのは初めてだった。
14年より異業種と提携してオムニチャネルに本格的に着手している。システム面ではコンサルティング大手アクセンチュアと、デジタルサービスの研究や開発などを手がける新会社を立ち上げた。物流面では大和ハウス工業との共同出資で16年に物流センターをオープンし、首都圏の一部で通販商品の当日配送を開始する。
セブン-イレブン・ジャパンなどコンビニエンスストアとの提携も探る。ネット通販の商品を既存の宅配サービスで消費者の手元に届けるだけでなく、全国に張り巡らされたコンビニの店舗網で商品を受け取ることができる仕組みをつくる。
ファストリがネット通販を成長の柱に据えたのは、米アマゾン・ドット・コムの大躍進に危機感を抱いたからである。衣料品は手で触り試着して買うのがセオリーであり、ネット通販は難しいとされてきた。ところが衣料品専門のネット通販会社が急成長を遂げ、アマゾンの米国での衣料品の売り上げは20年には百貨店大手メーシーズを抜き、米国最大の衣料品販売会社になる見通しなのだ。