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理央周「マーケティングアイズ」

際限なく加熱する家電量販店の値下げ戦争は参戦NG!なぜあの商品は高くても売れる?

文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長
際限なく加熱する家電量販店の値下げ戦争は参戦NG!なぜあの商品は高くても売れる?の画像1「Thinkstock」より

 先日、アップルウォッチを買おうと久しぶりに家電量販店に行ってみた。店内は「Sales!」のオンパレードで、「他店よりも高かったら店員にお申し付けください」と大音量のアナウンスが流れていた。ホリデーシーズンということもあり、店舗側としては値引きで売り上げを稼ごうという時期でもあるのだが、やはり今でも価格競争が至る所で活発である。

 しかし、戦略なき値引きは営業利益を悪化させるし、ブランドをマネジメントしていく上で重要な「見た目の価値=Perceived Value」も低下させてしまう。いいことはあまりないのだ。

 大企業ならまだしも、ベンチャーや中小企業はこの価格競争に対抗するために何をすればいいのだろうか?

中小企業の小売店は何をすればよいのか?

 近年では「家電量販店が法人に照準に置く」という傾向が強い。地方の売り上げ不振を受け、一部店舗に専任担当を置くなどの施策を取りインターネット通販の台頭などに対抗していく。

 しかし、対法人のビジネスは各販売ユニット当たりの利益率が低く、総じての売上総利益率は対個人消費者向けよりも低くなる。対法人向けのビジネス、企業間取引(BtoB)では一度に「量」が出るので、総合的なコストを抑えることができる。したがって、利益額の総量は稼ぐが、値引き合戦が繰り広げられていることが予想される。スケールメリット(規模の経済)を追うことができる大企業の販売方法である。

 値引き合戦は家電量販店だけに限らず、今多くの企業が抱える問題点である。この流れを受けて、中小企業は何をすべきなのか?

 大企業と同様に「対法人サービスを強化し、大規模量販店と価格競争をしよう」と考えるべきではない。大量購入・仕入れによる、値引き合戦で勝てるわけがないし、アマゾンなどのネット通販にも勝てない。何より営業利益も下がるし、ブランドマネジメント上で重要な「見た目の価値」が下がり、ひいては自社ブランドのイメージ低下につながる。いいことはないのだ。

サービスを分解せよ

 ではどうすればいいのか?

 価格以外のところで勝負すべきである。ひとつは「顧客体験の向上」である。顧客は買うというプロセスの中で、さまざまなことを「体験」する。家電の購入でいえば、次のようなフェーズが考えられる。

(1)商品を探す
(2)スペックを比較する
(3)価格を確かめる
(4)レジに持っていく
(5)車に積む
(6)商品を自宅に据え付ける
(7)実際に使う
(8)故障をしたら修理する

 各フェーズで企業が顧客に接することができるし、サービスを提供することができる。このタイミングこそがチャンスなのだ。これらどれかのフェーズに、自社だけの独自のポイントを入れればいい。

 たとえば、一軒家に住んでいる筆者は門灯などが切れると、特殊な電球を使っているために自分では替えづらい。そういうときに「うちなら迅速にやりますよ!」と、昔のナショナルのお店のようなことをすればいいのだ。

 そうすると少しくらい高くても、「またお宅にお願いするわ」となる。地方にはまだこういう顧客層がいるはずである。

 値引き合戦は、どの業界にも発生する。そのときには自分が有利な土俵をつくり、戦いの場所を変えるべきである。
(文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長

●理央 周(りおう めぐる、本名:児玉 洋典)

マーケティング・コンサルタント、企業研修講師。1962年生まれ。静岡大学人文学部卒。フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得。アマゾンジャパン株式会社、マスターカードなどで、マーケティング・マネージャーを歴任。2010年に起業。収益を好転させる中堅企業向けコンサルティングと、従業員をお客様目線に変える社員研修、経営講座を提供。2013年より関西学院大学経営戦略研究科教授として教鞭をとる。著書は『「なぜか売れる」の公式』(日本経済新聞出版社)、『仕事の速い人が絶対やらない時間の使い方』(日本実業出版社)など。商工会議所や経営者会での講演、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌への出演、寄稿も多数。


マーケティングアイズ株式会社

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