中国、海外企業を爆買い…異次元の巨額投資に「重大な不安」、瀕死の日本勢から覇権奪う?
中国の紫光集団が世界の半導体企業を“爆買い”している。その一方で、中国では半導体や液晶の工場建設ラッシュが起きている。本稿では、まずその状況を示したのち、それら工場の成否は技術者の確保にかかっていることを論じる。
台湾UMCが中国にギガファブ建設
台湾UMCが中国福建省アモイ市で、62億ドルを投じて300mmウエハで40nmノードのギガファブ(巨大工場)建設を開始した。2015年3月に着工し、16年7-9月に月産5万枚、いずれ10万枚へキャパを増大する予定である。ロジック・ファンドリー(システムLSI製造専門の半導体メーカー)としては中国で最大規模の半導体工場となる。工場の運営会社はUMCで、UMC、福建省電子信息集団、アモイ市政府の3者が共同出資する。自動車用マイコン、生産自動化向けセンサーのビジネスを目指すとしている。
中国への台湾企業の進出は、台湾政府が足枷となっていた。2000年に政権に就いた台湾独立志向の陳水扁政権が技術流出や台湾産業の空洞化を懸念して、中国への大型工場建設を許可しなかったからだ。これをめぐって陳政権とUMCは訴訟を起こし、その結果、UMCの創業者である曹興誠・董事長が辞任するなどの事態に発展した。こうした経緯もあり、台湾のファンドリーの中国進出は阻まれていた。
転機は08年に対中融和派である国民党の馬英九政権が誕生したことで訪れた。10年には中国企業への出資または買収というかたちなら300mmウエハの工場建設に参画できるという規制緩和に踏み切った。UMCにとっては中国市場に再挑戦する絶好の機会となるため、世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)に先んじて中国進出を決めた。
続いてTSMCも工場建設へ
15年12月7日、今度はファンドリー売上高世界一のTSMCが、中国に初めて単独で3700億円を投じて、300mmウエハの最先端半導体工場を南京市に建設すると発表した。18年下期に稼働させ、最先端の微細化技術16nmで2万枚の規模からスタートし、スマートフォン(スマホ)用プロセッサを製造する。年間出荷台数約5億台と中国がスマホの最大の市場となったことから、現地でプロセッサを生産すべきとの結論に至った。
これまでは中国と共同事業になるため知的財産が守りにくかったが、TSMCは単独で投資できるよう規制緩和を要望していた。それが15年9月に実現し、台湾のファンドリーの中国進出にメドが立った。
UMCにしろTSMCにしろ、ここが勝負となったら一気に攻め込んでいく決断力を有する。中国に巨大な半導体市場があるのは、誰の目にも明らかだ。日本企業も国内で縮こまっていないで、攻めるときは攻めるべきである。