中国、海外企業を爆買い…異次元の巨額投資に「重大な不安」、瀕死の日本勢から覇権奪う?
中国BOEが世界最大級の液晶工場建設
中国BOEは、テレビ用パネル世界シェア5位、スマホ用中小パネル世界シェア7位の企業である。その同社は15年12月2日、中国内陸部の安徽省合肥で世界最先端・最大級(第10.5世代)の液晶パネル工場を建設すると発表した。東京ドーム17個分の敷地に7700億円を投じて、2.94×3.37メートルのガラス基板の加工工場を建設するという。さらに今後3年間で2兆円を投じ、65インチ以上の大型液晶テレビ用パネルを月産9万枚体制で量産する予定である。
12月2日の工場着工式には、中国国家発展改革委員会、中央情報化省など中央官庁の幹部、地元政府の要人が参加し、国家プロジェクトの様相を呈したという。
BOEの大規模投資は、競合他社を振り落とし世界一のメーカーになるための戦略である。これは、かつては韓国サムスン電子が得意にしていた手法だ。先行者の日本・韓国・台湾メーカーをキャッチアップし、後発の中国メーカーの追随も許さず、今後2~3年で世界のトップメーカーになることを目指している。
BOEの計画の全貌は凄まじい。17年には、テレビ用の大型パネルと、スマホやタブレット端末用の中小型パネルの新工場をそれぞれ稼働させる。大型パネルの新工場が、福州市に建設中の第8.5世代ラインである。投資額は5800億円で、生産能力はガラス基板投入量換算で月12万枚(最終的には月14万~15万枚までキャパを拡大)。ここで、55型以下のテレビ用パネルを生産する。
中小型パネルの新工場は成都市に建設中の第6世代ラインで、資額は約4200億円。ここでは、現在日本や韓国が圧倒している低温多結晶Si(LTPS)TFT液晶パネルや有機ELパネルを生産する計画である。その上で7700億円を投じて15年に着工した合肥市の第10.5世代工場を18年第2四半期に稼働させるのだ。
これらの巨額投資を可能にしているのが、政府の支援や政府系ファンドの資金である。中小型パネル4200億円、55型テレビ用5800億円、65インチ超テレビ用7700億円、合計約2兆円規模の工場投資額の90%を、政府や政府系ファンドなどが負担する。中国が国の威信をかけた投資をして、世界トップをもぎ取る計画である。
日本では、シャープの液晶事業が売却されようとし、産業革新機構が株主となっているジャパンディスプレイも赤字、粉飾会計の東芝はほぼテレビ事業からは撤退する。半導体も液晶も、中国の巨大工場が生産を開始すれば覇権を奪われそうな気配である。