6月21日付当サイト記事『ソフトバンク経営陣に亀裂鮮明!次期社長候補アローラ氏が孫社長を「素人扱い」で痛烈批判』で、ソフトバンクグループの孫正義社長とニケシュ・アローラ副社長の亀裂を報じた。そのなかで、「孫氏は燃えるのも早いが、冷めるのはもっと早い。孫氏とアローラ氏の“別離”は、意外に早くやってくるかもしれない」と述べたが、この予言が的中した。
21日、ソフトバンクはアローラ氏が22日付で退任すると発表した。同社は22日に株主総会を開き、そこでアローラ氏は取締役として再任される予定だったが、総会の前日に電撃退任を発表した。株主向けの招集通知に記載された取締役候補が、突如、退任するのは極めて異例だ。
アローラ氏の退任発表に際して孫氏は「あと5~10年社長をやる」とコメントしたが、生涯現役で社長を続けるつもりなのかもしれない。後継者に指名していたアローラ氏を辞めさせるということは、「当面、後継者はいらない。邪魔だ」との意思表示ではないかと見る向きもある。
実は、米シリコンバレーで「アローラ氏が辞めるのではないか」との噂が流れていたことが、ここへきて判明した。
伏線は3月の人事・組織変更にあった。国内統括会社と海外統括会社に分け、国内は宮内謙取締役が、海外はアローラ氏が担うという棲み分けが行われた。この時点で、アローラ氏はグループ全体の権力を掌握したオールマイティの“ポスト孫”(後継者)でなくなったことを意味する。
くしくも、6月22日付で宮内氏が代表権を持った副社長に昇格し、海外事業を直接指揮する孫氏の補佐役となった。外様のアローラ氏より、子飼いの宮内氏のほうが安心できるということなのかもしれない。
電撃退任の前兆が、はっきりと表に出たのは6月20日だった。1月に匿名の投資家グループから届いていた「アローラ副社長の実績や適性に疑問」との書簡に関して、ソフトバンクは「調査を終了した」と発表した。取締役会の独立役員で構成する特別調査委員会が調査し、書簡で指摘されたような問題はなかったと判断。申し立ての内容について「評価に値しない」と結論づけた。この発表についても、「なぜ、今なのか」という戸惑いが社内にあったという。
米メディアによると、書簡では「アローラ氏がIT企業への投資を手掛ける投資ファンドの上級顧問として報酬を得ており、新興企業に投資するソフトバンクグループとの間で『利益の相反がある』と指摘していた」と報じられている。また、ソフトバンクでのアローラ氏についても、「実績に乏しく、疑問の余地がある取引がある」と批判していた。