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橋本之克「カモられない!コミュニケーション」

「スクリーンとやりとりする」映画『キンプリ』、20回以上も劇場で観る客続出で異例ヒット

文=橋本之克/アサツーディ・ケイ シニアプランニングディレクター

今、映画の常識が変わりつつある

 よほどの映画マニアでも、映画館で一つの映画を何度も繰り返して観ることは少ないはずだ。一度見ればストーリーは覚えてしまうし、新鮮ではなくなる。

 ところが今、こんな常識を覆して10回、20回と繰り返し観る人が続出する映画がある。それが『キングオブプリズム』、通称キンプリだ。1月9日より14館でスタートしたが、今では約半年のロングラン上映となっている。全国100館以上で公開され、動員人数は39万人、興行収入は6億円を突破した。

 しかもこの映画、ディズニーのようなブランド、有名な監督や主演俳優、タイアップ企業による後押しなどがない。繰り返し観るファンと、口コミだけでこれだけのヒットが生まれているのだ。

 もともとこの映画は、女性アイドルが活躍する女児向けテレビアニメ『プリティーリズム』のスピンオフ作品として誕生したが、本作では主なターゲットを10~30代女性と設定した。内容は“プリズムショー”と呼ばれるアイススケートをモチーフとしたパフォーマンスショーで、スターを目指す男の子たちの物語である。華やかなダンスシーン、主人公たちの友情、ライバルグループとの争いなどを通じた彼らの成長が描かれている。

かつてない、観客が「皆で参加する」映画

「スクリーンとやりとりする」映画『キンプリ』、20回以上も劇場で観る客続出で異例ヒットの画像2モノは感情に売れ!(橋本之克/PHP研究所)

 この映画の特徴は「応援上映」という鑑賞スタイルだ。これは、上映中も声援やコールが許されるほか、サイリウムと呼ばれる赤、青、黄などに発光するスティックを振りながら応援するなど、「映画館ではお静かに」のルールを取り払ったものだ。コスプレで来場する人も多い。

 ストーリーには、観客が「アフレコ」できるシーンも挿入されている。たとえば、冒頭の主人公が自転車で二人乗りをするシーンだ。後席に座る女の子が運転する主人公にアイスクリームを食べさせる。そこで「あ~ん」と入る字幕が「アフレコしてください」の合図だ。このセリフを観客たちが声を合わせて発する。画面の女の子の顔は影になってよく見えない。観客が自己投影できる映像になっているのだ。

 ほかにも観客が映像とやり取りする場面は多い。主人公の一人が「君たちに言いたいことがあるんだ」とセリフを言うと、すぐに観客が声を合わせて「な~に~?」と叫ぶ。

 このように全編を通じて、ただ鑑賞するのではなく、観客たちが「一体となって参加」するイベントのような状態となっている。

橋本之克/アサツーディ・ケイ 不動産エネルギー カテゴリーチーム・リーダー

橋本之克/アサツーディ・ケイ 不動産エネルギー カテゴリーチーム・リーダー

日本総合研究所を経てアサツーディ・ケイ入社。消費財から金融・不動産・環境エネルギーまで幅広く、マーケティング調査や戦略プランニングを行う。主な著作は『9割の人間は行動経済学のカモである』(経済界)

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