トヨタ自動車が配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズと提携を決めたことに、思わぬ波紋が広がっている。トヨタはウーバーとの提携事業は海外に限定しているにもかかわらず、国内タクシー事業者が同業界を脅かす存在であるウーバーと手を組むトヨタに強く反発しているためだ。トヨタは2017年に次世代タクシーを市場投入して、国内タクシーのほぼすべてをトヨタ車にする野望を持つだけに、タクシー事業者の思わぬ反発に戸惑っている。
「今回のトヨタとウーバーとの協業は、協業エリアに日本を含まないことをウーバーとの覚書の中に明記しており、日本での協業は考えておりません」
全国のタクシー事業者の業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会が6月23日に経団連会館で開催した通常総会で、トヨタはウーバーとの提携について釈明する文書の配布を要請する異例の措置を行った。
トヨタは5月26日、ライドシェア領域での協業を検討するため、ウーバーと提携することで合意した。まずウーバーのサービスを行うドライバーに、トヨタの金融子会社がトヨタ車をリースし、ドライバーがライドシェアで稼いだ収入からリース料金を支払ってもらう。また、トヨタはグループとしてウーバーに戦略的出資を行う。これらに加え、海外でライドシェアが拡大している国や地域で新しいサービスを検討して試験的に実施していく。
国内では実証実験中止
ウーバーは新サービスとして注目される「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」の代表格で、その配車サービスは世界の各市場で急激に成長している。配車サービスは、スマートフォン(スマホ)のアプリを使って、近くにいる登録ドライバーにライドシェアを要請、引き受けたドライバーは自家用車で目的地にまで送り届ける。料金はタクシー料金の半額程度で、使い勝手が良いことから世界中で利用者が増えている。ただ、事故に遭った場合の補償問題や、女性の利用者が運転手から暴行されるなどの事件も発生している。
ウーバーは2009年に米国で創業したが、現在70カ国・地域の450以上の都市でサービスを展開している。しかし、配車サービスの普及によって深刻な打撃を受けるタクシー業界が各地で強く反発している。米国ではすでにタクシー会社が数多く倒産に追い込まれている。