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「猫と同じ墓に入りたい」というケースも…“ねこでら”副住職が語る、いま飼い主に求められる覚悟

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「猫と同じ墓に入りたい」というケースも…“ねこでら”副住職が語る、いま飼い主に求められる覚悟の画像1※画像:『ねこでら 猫がご縁をつなぐ寺』著:御誕生寺/秀和システム

 国内のペット関連市場は、いまや1兆円を超えるまでに成長。「ペットを飼いたい」と思う人は増え続けています。

 一方で、ある統計(※)によれば、日本では年間で約15万頭もの犬や猫が保健所に持ち込まれ、そのうち10万頭が殺処分されているそうです。

 「かわいい」「癒される」など、ポジティブなイメージだけを持ってペットを飼い始めたものの、実際には面倒なことも多くて嫌になり軽い気持ちで捨ててしまう人も少なくないようです。

 「ねこでら」の副住職として、日々、猫に向き合ってきた猪苗代昭順(いなわしろしょうじゅん)さんは、人と猫との関係について、どのようなことを思っているのかを中心にお話をうかがいました。

――ところで副住職は元々、猫がお好きだったのですか。

猪苗代: いえ、実は犬派です(笑)。このお寺に入るまで、猫と一緒に暮らしたことは一度もありませんでした。でもこの3年間、猫の活動に携わるなかで、いろいろなことを勉強させてもらいましたね。

――たとえば、どんなことですか。

猪苗代: 時代の流れとして、人間にとって猫や犬が文字どおり「パートナー」になってきているということを、ひしひしと感じるようになりました。

 以前は、シャム猫がいいとか、何々猫がいいとか、ファッションのような感覚で猫を飼う人も多かったと思うのです。でもここ数年、明らかに潮目が変わり始めているといいますか、動物と一緒に暮らしている人も、一緒に暮らしていない人も、人と猫という意識の枠が薄くなってきていて、命と命が向かい合うということがどういうことであり、どう対応しなければならないかと考え、実行する人が増えているように感じます。

 実際、4年前に動物愛護管理法が改正され、「終生飼養の徹底」が前面に打ち出されるようになりました。つまり、ペットの飼い主は最後まで責任を持って飼うことが求められるようになったのです。

 その流れのなかで、ペットの虐待や遺棄に対し、従来よりも重い刑罰が課せられるようになった。つまりこれからは、軽い気持ちで猫や犬を捨てたことで、ひょっとしたら職を失う可能性すらあるのです。それだけ時代が変化し、人の意識も変わってきているということだと思います。

――いま、「猫と家族の一員として付き合う」というお話をうかがいながら、自分の実家の近所の人のことを思い出しました。その人は、飼っている猫が亡くなったとき、人間と同様、かなり手のかかったお葬式をなさったんです。そのような葬式を目の当たりにしたのは初めてだったので、とても印象に残っていまして。

猪苗代: そのようなお葬式は、今後当たり前になっていくと思います。たとえば、田舎のほうへ行くと「猫と同じ墓に入りたい」という人が多い。実際にはお墓の管理規約上できないケースのほうが多いのですが、このあたりはお寺も変わっていかなければならないでしょう。

 御誕生寺の場合でいえば、檀家さんはほとんどいないものの、猫専用の納骨堂があるため、毎月3件ほど、猫の納骨を希望してくださる方がいらっしゃいます。人であれ猫であれ、「ここにお骨を納めれば安心」と思っていただけるのは、お寺冥利に尽きます。

――猫専用の納骨堂があるのですね。では、最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

猪苗代: 先ほども少し触れましたが、今後ますます、人と動物との間の垣根はなくなっていくと思います。中国には無為自然(むいじねん)という言葉がありますが、簡単に説明いたしますと、対立軸がない、比べる物がないということです。アフリカの大草原で生きる野生動物は、人間とかかわることがなく、自然の摂理の中で一生を終えますが、社会問題になっている捨て猫は、人間の行いによって問題化される、いわば犠牲者です。終生一緒に暮らして、幸・不幸を与えず、幸せに暮らしていただきたいですね。

 それともう一つ。よく「御誕生寺さんは、猫がいるから人が来る」という言い方をされます。さらには、「猫をどんどん受け入れていったほうがいいんじゃないか」と言ってくださる方もいる。

 でも今は基本的に、猫の受け入れはすべて断っています。なぜなら、「いつかお寺のなかから猫がいなくなれば」と思っているからです。「かつては『ねこでら』と言われていたのに、里親制度により猫が次々と縁を結ばれ、最終的には1匹もいなくなった」となり、100年200年経ったとき、それが由縁となって、縁結びのお寺として静かにお参りいただければいいなと考えています。

※…環境省が平成26年に行なった調査「犬・猫の引取り状況」より

(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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