8月12日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、シャープの第三者割当増資における3888億円の払い込みを完了し、シャープの議決権の約66パーセントを取得しました。これによってシャープの債務超過が解消されるとともに、主力取引銀行のみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行はシャープへの融資枠3000億円を設定しました。
その結果、シャープの債務超過は解消され、格付投資情報センターはシャープの格付けを「CCC+」から「B」に引き上げました。また、株価もこれに呼応して上昇し、8月17日には141円の終値をつけました。また、シャープの高橋興三社長は辞任し、鴻海の戴正呉副総裁がシャープ社長に就任しました。
こうして、経営不振にあえいでいたシャープは、鴻海の傘下に入って再建を目指すことになったのです。
新経営陣は10月末に再建計画をまとめる方針で、次世代パネルの有機EL向け投資などを進める計画です。その一方で計7000人規模の人員削減を検討しており、今後一部事業の売却も含めて合理化が進みそうです。
本稿では、そのシャープの現状とリストラの方向性について、同社の開示データをもとに分析したいと思います。
粗利益率の極端な低下
まず、近年のシャープ業績の特徴をみてみましょう。
際立っているのが売上総利益率の低下です。リーマンショック(2008年)の前段階において、シャープは売上総利益率20~30%程度で経営を行ってきました。しかし、08年のリーマンショック以降は、同20%未満で推移しています(以下グラフ参照)。
日本の電機メーカーの売上総利益率は、概ね25%程度です。つまり100円の商品を売ったとすれば、そのうち75円が製造原価であり、25円が売上総利益(粗利益)になっているのが普通です。
ところが、リーマンショックが起きた08年、シャープは同16%に低下しました。つまり、100円の商品を売ったとすれば、うち84円が製造原価であり、粗利益が14円に縮んでしまったのです。この25円と14円の粗利益の差(9円)は極めて大きいといわざるを得ません。リーマンショックの頃、シャープの年商は約3兆円でしたから、100円当たり9円の利幅の縮小は、ざっと2700億円もの粗利益の縮小をもたらしました。その結果、粗利益によって回収すべき販売費や一般管理費が回収できず、営業利益や最終利益では大赤字になるという事態が生じたのです。これでは、とても商売になりません。