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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

終身雇用制と移民制限、経済成長の阻害要因…金銭解決による正社員解雇制度は不可欠

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
終身雇用制と移民制限、経済成長の阻害要因…金銭解決による正社員解雇制度は不可欠の画像1「Thinkstock」より

 一般的には、アベノミクスが始まっても、賃金の上昇が不十分といわれている。しかし、実は従前いわれているよりも賃金は上がっているというデータがある。賃金統計としては、毎月勤労統計調査が一般的に注目され、これによれば、2015年における一般労働者の所定内給与は前年比+0.6%にとどまる。だが、それよりもサンプル数の多い賃金構造基本統計調査によれば、一般労働者の所定内給与は前年比で+1.5%も伸びている。従って、実は一般的な認識よりも、家計収入は増えていることになる。

 しかし、雇用者報酬が増えているにもかかわらず、個人消費が増えていない。そして、雇用者報酬と個人消費のかい離が生じたきっかけは、14年4月の消費税率引き上げである。一方で消費税率引き上げというのは、将来の社会保障の充実のために上げるため、非ケインズ効果的な考えに基づけば、消費が増えるという見方もある。実際は逆で個人消費が減ってしまっているということからすれば、社会保障の充実は必要だが、それだけでは消費は増えないことを示している。

 なぜ家計や企業の財布の紐が緩まないかというと、マクロ経済的には個人消費にも設備投資にも関係してくるが、生産年齢人口が今後も減少を続け、国内のパイが縮小してしまうという漠然とした不安が大きいのではないかと考えられる。

移民政策の必要性

 実際、日本の潜在成長率と生産年齢人口や人口ボーナス指数の変化率といった人口動態との関係を見ても非常に関連が深い。そして、将来の人口予測に基づけば、20年代後半以降は日本の潜在成長率は非常に厳しい状況になると予測される。従って、将来の漠然とした不安を緩和するには生産年齢人口の下落を抑え込まなければいけないことになる。現在、アベノミクスでは一億総活躍社会の実現に基づいた政策が打ち出されつつある。

 現在、我が国では就業希望の非労働力人口が400万人以上存在し、失業者の2倍の規模となる。従って、こうした就業希望の非労働力人口が労働市場で活躍できる環境を整えれば、ある程度は潜在成長率を維持する時間稼ぎができる。

 しかし、やはり根本的には人口を増やさないことには経済成長の維持は不可能と筆者は考えている。つまり、潜在的な消費、投資の拡大を持続させるために、将来的には移民政策が必要だと考えている。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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