子供2人の世帯で貯蓄が年540万円増えた理由…家計簿は無意味?貯蓄増えない?
先日、ライフプランのご相談でお客様のご自宅マンションを訪問した。数年前から継続的にご相談を受けているのだが、ご自宅を訪問するのは初めてだ。30代前半の共稼ぎご夫婦で2人のお子さんがいるのだが、ご自宅は驚くほど物が少なくスッキリとしていた。いわゆるミニマリスト(最低限必要なものしか持たない人)の部屋に近い印象さえ受けたが、ご夫婦と話していて、そういった主義のようなものを感じることは皆無。単純に不要なものを買わない生活をした結果が、この状態なのだろう。
ご夫婦の話を聞いていて、さらに驚いたのは、この1年間で貯蓄が540万円増えていたことだ。確かに共稼ぎではあるのだが、世帯年収がそれほど多いわけではない。住宅ローンを返済中で、お子さんの教育費も結構な額である。
貯蓄が多くできたもっとも大きな要因は、月々の生活費が少ないことなのだが、このご夫婦には家計管理を努力している意識はなく、家計簿もつけていない。実は、私のお客様の中でも上位から数%に入るような高い貯蓄率の世帯は、このご夫婦に限らず、家計簿をつけていないのが普通である。
家計簿をつける目的は何か?
私は有料相談専門のファイナンシャルプランナーとして、毎日のように相談を受けている。「家計簿はつけたほうがよいですか?」は、お客様からもっともよく尋ねられる質問のひとつだ。
「家計簿をつけることはかなりの労力を必要としますが、それ自体が直接、支出を減らすわけではありません。そこに労力を使うことより、支出を減らす策を実行することのほうが成果に直結します。家計簿を長期間継続する必要はないですし、つけること自体が目的になってしまうことは避けるべきです」
これが、いつもの私の回答である。
私のお客様は共稼ぎのご夫婦が多く、時間や労力に余裕があるわけではないので、優先順位を明確にするためにこのように回答している面はある。また、毎日摂取する食物とエネルギー量を記録することで自覚し、意識の変化によりダイエットを促すというレコーディング・ダイエットのように、家計簿をつけることにより支出が減る効果があることも否定はしない。しかし、家計簿をつけることは、本質的には支出を減らす具体策を実行し貯蓄を増やすための準備である。その目的は主に次の2つであろう。
(1)月の支出を正確に把握して、適切な貯蓄目標額を計算・設定するため
(2)生活費が多いのであれば、支出項目のどこに原因があるのかを把握するため
これらの目的を達成するのに長期間つける必要はないため、お客様には家計簿をつけるのであれば3カ月間を私はお勧めしている。