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「正社員になれない」「希望職種につけない」が当然化…実感なき「雇用情勢の好転」

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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「正社員になれない」「希望職種につけない」が当然化…実感なき「雇用情勢の好転」の画像1「Thinkstock」より

「一般事務の正社員」という希望がかなう可能性は22%しかない

 8月30日、7月の有効求人倍率と完全失業率が発表された。全国の有効求人倍率は1.37倍。新規求人倍率は2.01倍。4月から4カ月連続で、全都道府県で1倍を超えている。完全失業率は3.0%だった。5月は3.2%、6月は3.1%だったので、1カ月に0.1ポイントずつ下がっている。数字の上では日本の雇用情勢は好転している。

 しかし、雇われても正社員になれるとは限らない。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、雇用形態を「正社員」に限定すると有効求人倍率(季節調整値)は0.88倍で、単純計算では正社員を希望する人100人中12人は、その希望がかなわない。リーマンショック直後の2009年には0.25倍で4分の1しか希望がかなわなかったが、それより改善したとはいえ、意に沿わない働き方をしている人はいまだに数多く存在している。

 さらに、希望する職種の偏りという問題がある。7月の厚生労働省の「職業分類」ごとの有効求人倍率(常用・除パート)を見ると、次のようになっている。

・管理的職業:1.35倍
・専門的・技術的職業:1.86倍
・事務的職業:0.33倍
・販売の職業:1.46倍
・サービスの職業:2.32倍
・保安の職業:5.83倍
・農林漁業の職業:1.02倍
・生産工程の職業:1.14倍
・輸送・機械運転の職業:1.85倍
・建設・採掘の職業:3.34倍
・運搬・清掃・包装等の職業:0.44倍

 このなかで、最も求職者が多いのは「事務的職業」で有効求職数が36万9479もある。それに対して有効求人は12万1636しかない。事務的職業の職種を細かく分けると、「一般事務」が最多で、有効求職数30万5592に対し有効求人数は7万6801で、その有効求人倍率は0.25倍。つまり4人のうち3人は「一般事務の仕事がしたい」という職種の希望がかなわない。

 有効求人倍率が1倍を超える他の職種はどうかというと、たとえば「管理的職業」つまり中間管理職は、他の企業で課長や部長をやっていた経験が問われるのがふつう。「建設・採掘の職業」は慢性的な人手不足だが、建設業などは必要な資格を取らないと仕事につけないことが多い。「保安の職業」「輸送・機械運転の職業」も事情はほぼ同じである。

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