米アップルは日本時間9月8日、スペシャルイベントで新製品に関する発表を行った。かねて発売が待ち望まれてきた「iPhone7」の詳細が明かされた。
市場のiPhone7に対する期待感は高く、発表直前までアップルの株価は上昇傾向だったが、発表直後から一転して売りが殺到した。6月に英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まり、その影響を受けて米国株全般が大きく売られたとき以来の下げ幅を記録した。
すなわち、iPhone 7は期待に応えるものではなかったと評価されたのだ。
発表翌日、多くのメディアでiPhone7の性能が紹介され、多くは肯定的な評価だった。なかには絶賛するものもあったが、iPhoneユーザーや市場の評価は逆だ。
iPhone7は、長らく期待されてきた防水加工が施され、イヤフォンジャックの廃止に伴ってコードレスのイヤフォンを採用した。さらに、日本向け機種は携帯電話の「おサイフケータイ」やJR東日本の「Suica」が採用する非接触ICカード技術「フェリカ」を採用したことで、日本での購買層拡大を狙っている。
iPhoneはここ数年販売台数に陰りが見られ、今年上半期のアップルは13年ぶりに前年同期比で減収減益となった。世界的に販売が苦戦しているが、好調さを保つ日本市場を重視していることがうかがえる。
さらに、総務省が大手通信会社(キャリア)が行っている多額のキャッシュバックなどによる「実質0円販売」を規制し始めたことで、日本での販売台数減少を懸念していたとみられる。
一方のフェリカやJR東日本も、電子決済サービス利用者が大きく落ち込み始めたため、アップルと提携することを選択したのだ。
フェリカや防水機能は以前から希望する声が多かったが、アップル独自の電子決済「アップルペイ」を広めたいアップルの意向や、防水機能をつけることでバッテリーの熱がこもることへの懸念から、採用は見送られてきた。だが、背に腹は代えられないところまできたため妥協して搭載したといえる。
これに対して、おサイフケータイやSuicaを待ち望んでいた人たちは歓迎の声を上げたが、いわば日本に古くからある機能を追加しただけで、革新的な機能がなく購買欲をくすぐられないと考えた人が多かったようだ。
アップルは従来よりもiPhoneを販売する国の数を増やして不振脱却を狙う。だが、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が事前に「誰もが新型iPhoneに買い換えたくなるような革新的機能を搭載する」と自信を見せていたのに対して、詳細を明らかにした途端に失望感が漂っている現状を鑑みると、買い替え需要がそれほど大きいとは考えにくい。