空家法とその効果
近年の空き家急増に伴い、自治体は、問題空き家の撤去、使える空き家の再利用の両面で対策を講じてきた。このうち撤去については、問題空き家に対し、指導・勧告・命令・代執行を行うことのできる空き家管理条例の制定が進んだ。
条例制定が進んだことを受け、2014年11月には、同様の内容を含む空家対策特措法(以下、空家法)が成立した(15年5月26日全面施行)。空家法では、(1)倒壊等保安上危険、(2)衛生上有害、(3)著しく景観を損なうなどの状態になっているものを「特定空家」と認定し、指導・助言、勧告、命令、代執行の措置を行えるものとした。また、空家法では、従来、代執行ができなかった所有者がわからない場合も代執行できるようになった(略式代執行)。
同時に15年度税制改正では、勧告の対象となったものについては固定資産税の住宅用地特例を解除することとした。住宅を建てた場合の税軽減の仕組みは、住宅が足りない時代には住宅取得を促進する効果を持ったが、住宅が余っている現在では、危険な状態の住宅でも撤去せず残しておくインセンティブを与えていた。
このように空家法と税制改正によって、特定空家の所有者に対してプレッシャーが強まった。これが空き家所有者の行動に与える影響としては、特定空家にならないように維持管理を行う、賃貸化するなど物件を活用する、維持管理コストと将来的な税負担増を考えて売却するなどの選択を行うことが考えられる。
ただ、特定空家の所有者の税負担を高めたとしても、所有者にその支払い能力がなく、撤去費も出せない場合には、そのまま放置される物件も出てくると考えられる。この場合、最終的には代執行に至るが、費用を請求しても払ってもらえず、費用回収のため敷地の売却を迫られる。しかし、売れたとしても抵当権が付いていた場合、自治体に回ってくる分があるかはわからない。代執行に積極的に踏み切る弊害としては、最終的にこうした措置が取られることがわかっているとしたら、自ら動かず、自治体による措置が取られるに任せる所有者が出てくることである。
さまざまなかたちの公費投入の仕組み
空家法と税制改正の効果により、特定空家の自主的な撤去は、従来よりは進んだ。現に自治体が直面している問題は、それでも対応してくれない場合、すべて代執行を覚悟するのか、あるいはそうなる前の段階で、撤去費補助などを通じ自主的対応をさらに促しておいたほうが得策なのかという問題である。