週休3日制でGDP増、子育て支援との両立を…世界で突出した長時間労働・低生産性
日本を含む先進諸国では1990年代以降、ICT(情報通信技術)等の技術革新やグローバル化の進展に伴い、知識集約型の高スキル(専門知識や特殊技能)を要する高賃金の職種や、労働集約型の低スキルで低賃金の職種が増加する一方、その中間の職種が減少する傾向が長期的に進んでおり、「雇用の二極化(job polarization)や賃金の二極化(wage polarization)、いわゆる「労働市場の二極化」が進行しつつあるという指摘がされてきた。
当初、この二極化については、以下の仮説などが主張された。
(1)グローバル化仮説:グローバル化で貿易の自由化が進み、未熟練労働需要が減少
(2)スキル偏向型技術進歩仮説:高い専門的知識や技能を有する人材をより多く必要とする技術進歩が起こり、高学歴者の労働需要が増加
(3)低学歴層増加仮説:教育の質低下や移民流入で低学歴者が増加
(4)労働組合組織率低下仮説:近年、労働組合の組織率が急激に低下
(5)最低賃金低下仮説:インフレとの関係で実質的に最低賃金が低下
このうち、(1)や(2)が主流であり、最近は(2)の「スキル偏向型技術進歩(Skill-Biased Technical Change)仮説」が最も説得的であるとする実証分析が多い(Acemoglu, 2002やAutor, Katz, and Kearny, 2006, 2008)。
他方、1990年以降、先進諸国の年間労働時間(短時間勤務のパートを含む)は低下傾向にあるが、OECD(経済協力開発機構)データによると、2015年における日本の労働時間は年間1700時間を超えており、スウェーデンの1612時間、フランスの1482時間、ドイツの1371時間よりも突出して多い。最近の事件(例:電通や関西電力)でも改めて、日本の過剰な長時間労働の深刻さが問題となった。
にもかかわらず、「労働時間1時間当たりのGDP」(2010年基準)は、2014年において、スウェーデンが54.4ドル、フランスが60.3ドル、ドイツが58.9ドルである一方、日本は39.4ドルしかない。
「労働時間」と「生産性」は負の相関関係
この原因はいったい何か。以下は筆者の仮説であるが、この原因は「先進諸国の多くでは、労働時間が少ないほど、単位時間当たりの生産性(1人当たりGDP /労働時間)を高めることができる」という仮説に深く関係していると思われる。