韓国の経済や政治を見ていると、どうしても先行きへの懸念を抱かざるを得ない。サムスンのスマートフォンの発火問題の原因究明が進まないなか、米国では同社の洗濯機の爆発を受けてリコールが行われている。減益が続く現代自動車では、経営改善よりも従業員が賃上げを求めてストライキを行っている。韓進海運の経営破たん、ロッテの不正資金問題など、多くの財閥(チェボル)企業の経営が行き詰まっている。それでも、抜本的な経営改革の話題は聞こえてこない。
10月下旬には、朴槿恵(パク・クネ)大統領の知人女性が国政に介入していたことが発覚した。発覚のタイミングを考えると、かなり深刻なスキャンダルだ。韓国の大統領は、国家元首であるとともに陸海空軍の統帥権を持つ最高権力者だ。北朝鮮との休戦状態にある国のリーダーが民間人に機密情報を渡していたという事実は、国家管理の甘さを露呈させたことにほかならない。国民の怒りは高まっている。
韓国経済を支えてきた財閥企業の経営が悪化し、本来であれば長期の視点で構造改革を進めるべき政府の機能も低下しているなか、韓国は自力で国力を支えることができるだろうか。世界経済の先行き不透明感が高まるなか、状況は楽観できないように思う。
一部の財閥依存の韓国経済
これまで韓国経済の成長は、サムスンや現代、韓進などの財閥企業への経営資源の集中によって支えられてきた。電機メーカーではサムスンやLGがスマートフォンやテレビ、半導体市場でシェアを伸ばし、自動車では現代の存在が大きい。それを韓進の海運業などを使って輸出することで経済が成長してきた。
“財閥一本足打法”ともいうべき、財閥企業による独占色の強い経済構造が出来上がった背景には、朴大統領の父親である故朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の政策があった。朴元大統領は民主化を弾圧したことで知られるが、同時に経済開発に力を入れた。この政策を開発独裁と呼ぶこともある。
朴元大統領は財閥を中心に工業化を進め、輸出競争力の向上を図った。第2次世界大戦後、北朝鮮よりも経済力が劣っていた韓国にとって、内需拡大よりも外需獲得を重視するほうがより高い成長を期待することができた。そこで1965年、日韓基本条約を締結して経済支援を取り付け、79年に暗殺されるまで開発を進め、韓国経済は“漢江の奇跡”と呼ばれる成長を遂げた。