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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

専門知識の終焉…プロ囲碁棋士に勝った人工知能(AI)、開発チームに囲碁プロ級おらず

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
専門知識の終焉…プロ囲碁棋士に勝った人工知能(AI)、開発チームに囲碁プロ級おらずの画像1「Thinkstock」より

 半導体の洗浄技術の学会「界面ナノ電子化学研究会フォーラム2016」が、10月28~29日の2日間、長野県の上諏訪温泉「浜の湯」で開催された。筆者は初日の後半で『人工知能と半導体プロセス』についての基調講演を行った。講演では、「IoT(モノのインターネット)の本質とは何か?」「AI(人工知能)の本質とは何か?」を述べた後、これらによって「半導体プロセスの未来はどうなるか?」を論じた。

 本稿では、同講演内容に基づいて、前半でIoTとAIの本質について解説し、後半で半導体プロセスの未来について論じる。

 本稿の結論を先取りすれば、今後の半導体の技術開発では、「いかにAIを使うか」ということが企業の優勝劣敗を決める。「AIに半導体の開発ができるはずがない」という古いパラダイムに支配されている企業は淘汰されるだろう。いつの時代も「パラダイムは変わる」ことが普遍の真理であり、生き残るのは強い者でもなく賢い者でもなく、適応する者であるということだ。

2020年には500億個がネットにつながる

 2010年にPCの出荷台数をスマートフォン(スマホ)が追い抜いた。そして米アップルの初代iPhone用プロセッサの製造委託を断るという「インテル史上最大のミスジャッジ」により、12年11月にインテルのポール・オッテリーニCEO(最高経営責任者)が辞任を発表した。その頃からインテルが、「次はIoTだ」「今後はIoTが半導体産業を牽引する」と騒ぎ始めた。

 当初は、PCがスマホに駆逐されて低成長になり、スマホ用プロセッサにも食い込めないことから、窮地に陥ったインテルが苦し紛れに騒いでいるのだろうと思われていた。ところが、この騒ぎは業界中どころか業界を超えて波及し、15年には猫も杓子も「IoTだ」と言いはじめ、新聞では連日IoTが取り上げられるようになってきた。

 そして、米シスコシステムズによると「ネットにつながる機器の数は15年に250億個、20年に500億個に達する」見通し。米IDCの予測では、「関連機器やソフト、サービスの市場規模は20年に7兆650億ドル(約720兆円)に膨らむ」とまでいわれている。「500億個で720兆円」ということは、世界人口は約70億人なので、単純に割り算すると20年にはひとり当たり7個以上のネット接続デバイスを持ち、それがひとり当たり9億ドル超の市場を生む計算になる。

 なぜ、あらゆるモノとモノがネットでつながる必要があるのだろう。そして、なぜそれによって利益が生まれるのだろう。

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