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米トランプ当選とTPP崩壊で、中国の覇権強まる兆候…アジアで一大経済圏形成

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 TPPへの関心の高さは、グローバル化が世界経済にとって重要であることを示している。第2次世界大戦終結後の世界経済は、米国の政治、経済力を軸に復興と成長を経験してきた。各国は自由貿易協定や経済連携を締結し、貿易障壁の解消が進んだ。こうして、国際貿易や海外直接投資(FDI)が増え、世界経済の成長が達成された。1995年にはガット(GATT)ウルグアイ・ラウンドの交渉を受けて世界貿易機関(WTO)が設立された。それは、貿易障壁を取り除き、さらなる貿易の自由化などを進めることが国際経済の効率的かつ円滑な発展に欠かせないとの考えを反映している。

 2001年以降、国際的な通商交渉はドーハラウンドに移ったが、農作物分野での考えがまとまらず、各国の交渉は膠着状態に陥った。この状況を解消し、国際的な経済連携を進める上でTPPへの期待は大きかった。それだけでなく、TPPには米国を中心とする対中包囲網の形成をいう側面もあった。

独自の経済連携を模索する中国

 
 ドーハラウンドの交渉が膠着するなか、05年に中国は「東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)」を提唱し、民間レベルでアジア地域を対象とする経済連携の研究が始まった。06年には日本が「東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)」を提唱し、アジアでの経済連携、長期的な市場の統合をも視野に入れた議論が徐々に進んだ。

 その上で11年11月の東アジア首脳会議では、日中の提案を組み合わせた「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」に関する作業部会の設置が決められた。RCEPは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に日中韓印豪新を加えた16カ国からなる取り組みであり、世界のGDP、貿易のそれぞれ30%程度を占めている。

 その後、日本が米国やアジア各国とのTPP交渉に注力するなか、中国がRCEPの交渉を主導し、米国のTPP、中国のRCEPどちらに組するかで各国の思惑は揺れてきた。これは、TPPとRCEPを通した米中の覇権争いといえる。RCEPだけでなく、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)、そして、「シルクロード基金」を設立してアジアから欧州までを陸路と海路でつなぎ、一大経済圏を整備しようとしている(一帯一路構想)。

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