榊原定征日本経済団体連合会(経団連)会長が、昨年末からピリピリしている。経団連会長の任期は2期4年であり、2014年6月に就任した榊原会長の任期は18年6月まである。
「昨年12月に発売された『文藝春秋』(文藝春秋/新年特別号)が“ポスト榊原”に関する記事を掲載し、まだ任期切れまで時間もあるのに、なぜポスト榊原の話が出るのかと、本人ははなはだ面白くない様子。榊原氏の周辺は『今はいつ企業不祥事が起きてもおかしくない時代。こんな早い時期に次を決めるわけがない』と、早期にレームダックにならないよう、火消しに躍起になっている。だが、次期経団連会長人事はすでに動き出しており、今年の年央から後半にかけてほぼ固まるとみられている」(財界担当記者)
このタイミングで次期会長人事が報じられたのは、次期会長の大本命であるトヨタ自動車の豊田章男社長が就任を断ったからだ。2020年の東京五輪を迎える経団連トップにはトヨタがふさわしいということで、財界の意向はほぼ一致していた。トヨタからは内山田竹志会長が経団連副会長に選ばれているが、任期は今年6月まで。後任として豊田氏が副会長になり、榊原会長の後を受けて18年に経団連会長に就任するというのが、財界主流派が描いていたシナリオだった。
ところが、「副会長はまだ早すぎる」と言って豊田氏本人が固辞している。もし豊田氏が経団連会長になるなら、今年春には内山田会長と交代して経団連副会長にならなければならないが、トヨタ社内にそうした動きはない。
「榊原さんと安倍晋三首相はまるで“上下関係”。豊田氏は内心、それを嫌悪している。現在の経団連会長の椅子に、まったく魅力を感じていない」(トヨタ関係者)
経団連会長は出身企業では会長になるのが通例だが、豊田氏は現役バリバリの社長。しかも現在60歳で、油が乗りきっている。会長に退くには早すぎる。豊田氏が就任をはっきりと断った。というより、父親でトヨタ名誉会長の章一郎氏が断ったというのが真相に近いといわれている。
「そもそも章男氏が経団連会長になるには、章一郎氏のOKが大前提」(経団連元副会長)
消える候補者
経団連会長になるための必要十分条件は、暗黙のうちにメーカーのトップということになっている。現在の経団連副会長でこの条件を満たすのは、日立製作所の中西宏明会長と三菱重工業の宮永俊一社長、住友化学の十倉雅和社長。だが、三菱重工は16年9月中間決算で7年ぶりの赤字。造船部門を切り離すほか、国産初のジェット旅客機MRJが離陸するかどうかも不透明な状態で、経営は三重苦、四重苦。経団連会長どころではない。宮永社長には交代の観測さえ出ている。
住友化学の十倉社長は前任の経団連会長だった同社の米倉弘昌相談役が辞めるに当たって、強引に副会長に押し込んだといわれている。
「十倉氏は経団連会長の器ではない」(現経団連副会長)