2016年、格安スマートフォン(スマホ)の競争は激化の一途をたどった。端末と回線のセット販売がトレンドになり、シンプルだった料金プランは急速に複雑化。わかりやすい違いを打ち出すべく、各社はタレント起用や実店舗展開、データ増量キャンペーンなどの「体力勝負」を繰り広げている。果たしてその最前線はどうなっているのか、最近の格安スマホ事情を振り返ってみたい。
格安スマホがマニアから一般ユーザーへと拡大
大手キャリアから回線を借り受けて通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)は、データ通信端末などを安価に使いたいパワーユーザーが客層の中心だった。だが、「格安スマホ」という言葉が普及してからは、メイン端末としての需要が増加。楽天モバイルでは新規ユーザーの実に8割が音声通話SIMを選択する事態になっているという。
多くの格安スマホ事業者はNTTドコモから回線を借りており、エリアの広さは共通だ。そこで、どのようにして差別化するかが課題になる。
目下のトレンドは、大手キャリアにもみられる端末と回線のセット販売だ。端末とSIMカードを別々に買うよりもわかりやすい点が、初心者に好評だという。だが、1年目の料金だけを安価に設定するなどプランは複雑化しており、「格安スマホ=シンプル」という評価は崩れつつある。
料金の決め手になるデータ容量はどうだろうか。16年、大手キャリアは相次いで「月間20GB」などの大容量プランを導入し、注目を浴びた。これに対して格安スマホは、一時的にデータ容量を増量するキャンペーンを各社が競い合うように導入している。
特定アプリにおけるパケット無料化も、一部の事業者が積極的に導入する。LINEやTwitter、Facebook、Instagramなどの基本利用をデータ容量としてカウントしないもので、実質的な割引になる。こうした特定アプリの優遇は長期的に競争を歪めるとの懸念もあり、大手キャリアは手を出しづらい領域だけに、格安スマホの差別化ポイントになっているのが現状だ。
ワイモバイル、UQモバイルという2大「サブブランド」に注目
格安スマホ業界のなかでやや特殊な存在が、ソフトバンクのサブブランドである「ワイモバイル」と、KDDIグループの「UQモバイル」だ。ワイモバイルは低価格のプランを取り揃える一方、全国に販売店を展開しており、初心者にも安心してすすめられる格安スマホになっている。
これを追うKDDIは、グループ会社が展開する「UQモバイル」と販売面で協力するなど関係を深めている。ドコモ系MVNOやワイモバイルにユーザーを取られるくらいなら、グループ会社のUQモバイルに移ってもらいたい、との狙いが見え隠れする。