今後の鍵を握るのが、SIMロックだ。MVNO事業者の大半がドコモ系になっている理由のひとつとして、ドコモの端末ではSIMロックを解除することなく、ドコモ系の格安SIMを利用できるという点がある。そこで格安スマホを促進したい総務省は、KDDIやソフトバンクでもこの方式を導入する構えだ。
たしかにSIMロックの解除は、制度としては提供されているものの、一般ユーザーには馴染みがなく利用はなかなか進んでいないようだ。だが、SIMロックを意識することなく格安スマホを使えるようになれば、KDDIユーザーがUQモバイルへ、ソフトバンクユーザーがワイモバイルへと、一斉になだれ込む可能性が出てきたといえる。
格安スマホの「体力勝負」に、大手キャリアも絡んできた
こうして振り返ると、格安スマホを取り巻く環境はずいぶん変わってきたことがわかるはずだ。当初の格安スマホは、大手キャリアのような店舗網を持たず、サポートなども最小限とする代わりに安価でシンプルな料金プランを提供する、無駄をそぎ落としたビジネスモデルだった。
だが16年には、格安スマホ各社による大手キャリアの後追いが加速。タレントを起用した発表会やテレビCMは当たり前になり、端末と回線のセット販売や実店舗展開、充実したサポートの提供など、大手キャリア顔負けの施策を打ち出す事業者が続出している。
こうして販売やプロモーションのコストが増える一方、ファーウェイの最新フラグシップ「HUAWEI Mate 9」は、発売と同時に楽天モバイルなどが値引きを開始するなど、価格競争は激化している。まさに体力勝負の様相を呈しており、そろそろ脱落する事業者が出てきても不思議ではない。
そこへきて12月には、KDDIがインターネットサービスプロバイダー大手のビッグローブを買収。固定回線の利用者だけでなく、ドコモ系のMVNO事業会社がKDDIの傘下に収まることが衝撃を呼んだ。17年は格安スマホ同士の競争に加えて、大手キャリアの勢力争いがどう絡んでくるかも注目だ。
(文=山口健太/ITジャーナリスト)