サントリー、あえて毎年大きく利益を目減りさせる長期戦略重視の経営…のれんの難点
今回は、今どきの企業会計の難点をお伝えしたいと思います。それは、「のれん」という資産の償却処理です。まずは、のれんの会計処理方法を解説しましょう。
のれんの会計処理方法には、次の2通りのものがあります。
(1)国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)と米国会計基準
原則として、のれんは償却しない。ただし、のれんが生じたM&A(合併・買収)によって得られるリターンが期待よりも小さくなり、資産計上されているのれんが過大であると判断された場合には、相当の減損処理を行う。
(2)現行の日本の会計基準
のれんは、20年以内で償却される。しかも、IFRSや米国会計基準と同様に、のれんが生じたM&Aによって得られるリターンが期待よりも小さくなり、のれんが過大であると判断された場合においても、相当の減損処理を行う。
のれんとは:パナソニックの事例
のれんとは、企業のM&Aの時に限って計上される特殊な資産です。
たとえば、パナソニックは2009年に三洋電機を買収しました。このとき、三洋の貸借対照表の純資産を公正価値で評価すると、4000億円程度と評価されていました。しかし、パナソニックは9000億円を投じて三洋を買収しました。
なぜ、時価が4000億円の会社に対して9000億円が投じられたかというと、被買収企業の投資においては、貸借対照表に載らないさまざまな資産があると評価されるからです。これは、三洋が持っている技術力であったり、ネームバリューであったり、得意先とのリレーションシップだったりします。これらを総称して「超過収益力」と呼ぶことがあります。
とにかく、この超過額の5000億円(=9000億円-4000億円)は、のれんとしてパナソニックの貸借対照表に資産計上されます。このあと、そののれんがどう処理されるかがポイントになります。M&Aが大掛かりであればあるほど、のれんの金額は大きくなる傾向があります。そうなると、その巨額ののれんがどう処理されるかで、その後の業績が大きく左右されます。
パナソニックの場合、米国基準が採用されていましたが、米国基準ではIFRSと同様に、のれんの償却が行われません。