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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

日本国債市場、18年に完全に干上がる可能性…いまも未解決の異次元緩和の限界

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
日本国債市場、18年に完全に干上がる可能性…いまも未解決の異次元緩和の限界の画像1日本銀行(撮影=編集部)

 昨年(2016年)9月下旬、日本銀行は量的・質的金融緩和(いわゆる「異次元緩和」)を軌道修正し、短期金利を▲0.1%に誘導するマイナス金利政策を維持しつつ、長期金利を0%に誘導する新しい金融政策の枠組みの導入を決定した。この新たな枠組みにより、「量」を重視する政策から、「金利」を重視する政策に転換することを明らかにした。

 しかし、異次元緩和の軌道修正を図ったといっても、これまで年間約80兆円のスピードで日銀が長期国債を買い取っていたものを、今も年間で約70兆円のスピードで買い取る程度に減速しているだけで、国債市場が干上がるという「異次元緩和の限界」が完全に解消されたわけではない。

 では、現状では、異次元緩和の限界はいつ頃に到来する可能性があるのか。正確な予測は極めて難しいが、いくつかの前提を置けば、それは日銀が公表する「資金循環統計」から作成した以下の図表から読み取れる。

日本国債市場、18年に完全に干上がる可能性…いまも未解決の異次元緩和の限界の画像2

 まず、図表の黒色の太線は政府の借金である「国債残高(A、右目盛)」(資金循環統計の「国債・財投債」をいう。以下同じ)の推移を表す。そのうち、赤色の太線は「日銀(B、左目盛)」が保有する国債残高、青色の実線は民間の「銀行等(C、左目盛)」が保有する国債残高、緑色の実線は「保険・年金基金(D、左目盛)」が保有する国債残高、青色の点線は「その他金融仲介機関(E、左目盛)」(例:公社債投信)が保有する国債残高、黒色の点線は「海外(F、左目盛)」が保有する国債残高の推移を表す。

 また、2016年Q3(7~9月)までは上記A~Fの「実績」であるが、2016年Q4(10~12月)以降は「予測」である。具体的には、次のような仮定を置き、上記A~Fの数値を延伸した。

長期国債を買い増す政策、再び見直しか

 まず、政府の借金である「国債残高(A)」は07年Q1(1~3月)から16年Q3までの増加が年間約30兆円であるが16年Q4以降、政府の借金である「国債残高(A)」は年間約32兆円のペースで増加するものとした(注:この設定は、現在逼迫する国債市場の需給を若干緩和するもの)。また、現行の金融政策を実行するため、「日銀(B)」は2014年Q1以降、ネットで年間70兆円の国債を買い増し、そのほかのC~Fは保有する国債残高を維持するものとした。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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