東芝が債務超過となり、東証2部へ降格になりそうです。名門企業である同社の長い歴史のなかでも最大の汚点です。
会計士・税理士である筆者は、数年前より東芝の「会計」の甘さが気になっていましたが、本稿では具体的に解説したいと思います。
1.キャッシュ・フローに無頓着
たとえば、下記は粉飾発覚前の財務データです。
これをみると、損益計算書のデータは粉飾していたため、7年間の累計で1,002億円の黒字を出していますが、キャッシュ・フロー計算書のデータは、企業経営の苦しさを物語っています。
たとえば、2009年3月期は営業キャッシュ・フローが160億円のマイナスであり、投資キャッシュ・フローが3,353億円のマイナスになっています。この両者を合算すると3,513億円のマイナスになります。これを「事業活動によるキャッシュ・フロー」といいますが、これがマイナスだということは、「事業をして稼ぐお金よりも、事業を維持するために出てゆくお金のほうが大きかった」ことを意味します。
早い話、この時期の東芝は、お金を稼ぐことができなかったのです。その結果、前述の7年間トータルでは、事業活動で1,352億円を失っていることがわかります。
ところが東芝の経営陣はキャッシュ・フローに疎く、このような経営を継続し、執行役員に業績連動給を払っていました。その業績も彼らのいう「チャレンジ」(「粉飾」の隠語)の賜物であるのならば、支給すべき筋合いのものではありません。
このように、見栄えの良い損益計算書と、見栄えの悪いキャッシュ・フローが並立する会社というのは、何らかの問題をはらんでいることが多いのですが、東芝の場合、それが粉飾決算であったことが後日明らかになりました。
しかし、かりに粉飾決算が行われなかったとしても、キャッシュ・フロー計算書のデータが望ましくない会社の経営というのは、要注意です。
これは東芝に限ったことではありません。たとえば、下記は日本の製缶メーカーのトップ企業ともいえる、東洋製罐グループホールディングスの財務データです。
損益計算書はまずまずの業績を示していますが、事業活動によるキャッシュ・フローが7年間のトータルではマイナスになっています。その結果、お金が足りず、借金が増えています(下記のグラフ)。