2008年のリーマンショックや11年の東日本大震災によるサプライチェーンマネジメントの変革など、近年、経済の構造と企業経営のあり方に変化が強いられている。
そのなかで各企業に必要とされるのは、新たな経営価値観を持つ“新戦力”だ。そんな人材を確保するうえで頼りにされる存在としてヘッドハンターがいる。2013年に当サイトでもヘッドハンティング業界の実態について紹介したが、当時はヘッドハンティングの対象はマネージメント層が主だった。だが、その状況に変化が訪れているという。
2月に『会社の壁を超えて評価される条件:日本最強ヘッドハンターが教える一流の働き方 』(徳間書店)を上梓した、トップヘッドハンターで半蔵門パートナーズ株式会社代表取締役の武元康明氏に、業界の変化について話を聞いた。
ヘッドハンティングの対象は30代前半まで拡大
武元康明氏(以下、武元) 組織のヒエラルキーは、基本的にはマネージメント層、ミドル層、実務層の3つに区分されたピラミッド型になっています。かつては、その上層部であるマネージメント層を対象とする相談案件が多かったのですが、それがだんだんとミドル層や技術者や有資格者など一部の実務層にも我々エージェントのサービスを活用しようという動きが広がってきています。
その背景には、経済の構造改革が迫られた際に受け入れたマネージメントクラスの人材によって描かれた新たなビジネスプランが、実行するフェイズへと移り、それによってミドル層以下の人材が必要になってきたということがあると思います。
――対象が広がるのは、ヘッドハンティング業界において追い風といえるでしょうか。
武元 確かにそういった側面もあります。しかし、08年から日本の人口は減少傾向にあり、それに伴って経済成長がゼロベースとなった場合、30年には790万人の就業人口が減るといわれています。そうなると、どの企業も人材の獲得が難しくなってくるので、その引き抜き合いに我々が担ぎ出されることになってしまいかねません。
我々のエグゼクティブサーチ(ヘッドハンティング)は、人材の適材適所の就業、偏在の解消をポリシーとしているので、そういった引き抜き合いに活用されないように、慎重に行動をしなくてはいけないという危機感は持っています。