――マネージメント層とミドル層、実務層では、ヘッドハンティングの対象としてリストアップする基準は変わるのでしょうか。
武元 それは変わりません。日本の企業の場合、新たな人材には、「OS」(人生や仕事に対する価値観)と「アプリケーション」(スキルやスペック)の2つの要素が求められます。最初の段階ではアプリケーションの面で実績を持った方がリストアップされる可能性が高いですが、紹介する企業にふさわしいかどうかというフェイズになってくると、やはりOSの部分が問われます。それはマネージメント層でも、ミドル層、実務層でも同じです。
――リストアップされる対象は、マネージメント層の場合では40~50代が多かったとのことですが、ミドル層、実務層ではいかがでしょうか。
武元 年齢に関していうと、ミドル層、実務層の場合の候補者は、下は30代前半まで広がっています。しかし、若い方は価値観がまだできあがっていないので、紹介する会社の経営理念やビジョンを説いても、「もっと実利の部分を示してほしい」と、給料面や勤務地などのわかりやすい条件に耳を傾けやすく、難しい面もあります。そういう方には、理念の説明を後回しにして、条件面を先に伝えることにしています。話すコンテンツは変わりませんが、トークの手順を変えるだけで企業に対する印象も変わってきます。
ヘッドハントされたければ社内コミュニケーションを重視せよ
――現状の職場に潜在的な不満があるとして、「ヘッドハントされたい」と考えるミドル層、実務層は、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。
武元 自身の実績を社外に知らしめるのはもちろん重要ですが、実務クラスになればなるほど、我々はそういった情報を得にくいのが実情です。では、我々はどうやって情報を得るかというと、人からの推薦です。実際にあったケースだと、候補者の部長に声をかけたら、「私は動けないが、部下から丁度相談を受けていて適任者がいる」と紹介され、マッチングが実現したこともありました。「上司がそんなことをしていいのか」と思うかもしれませんが、その企業の事業が縮小している流れであれば、上司も親心から部下が別の場所で能力発揮する環境を与えたい、成長を促したいと思って推薦しやすいのです。
したがって、まずは「アプリケーション」を磨く必要があるのですが、実務層に向かえば向かうほど、社内での人間関係やコミュニーションも同じくらい大切になってきます。やはり日本は欧米と違って和の文化に基づいた経営の仕組みが成り立っているので、人間関係を構築することの重要性は大きいです。
――現在所属する企業で得ている信頼が、紹介される企業における信頼感へとつながるわるわけですね。では最後に、スキルがあるにもかかわらず、職場で思ったように活躍できないと感じているミドル層、実務層にアドバイスをお願いします。
武元 うまく活躍できない場合、能力がないのではなくて、その人のOSと会社のOSがうまく合致していないことも十分に考えられます。決して簡単に転職することを促しているわけではありませんが、今の職場でどうにもやりきれなかったら、腐ったりあきらめるのではなく、環境を変えてみることも選択肢のひとつに入れてみてはどうでしょう。
――ありがとうございました。
(構成=編集部)