文房具の老舗メーカー、ぺんてるが2月に発売した、高級シャープペンシル「オレンズネロ」が爆売れしている。
1本3000円(税抜)と、シャーペンにしてはかなり高額にもかかわらず、発売から3カ月たった今も、入荷するたびに即完売という状況だ。Amazonなどのインターネットショッピングサイトでは、定価の3倍近い値が付けられているプレミア商品となっており、転売目的で購入する人まで出ているほどだ。
そこで、ぺんてるマーケティング推進部に、「オレンズネロとほかのシャーペンの違い」について話を聞いた。
開発に2年を要した「オレンズネロ」
「一般的なシャーペンとの一番の違いは『自動芯出し機構』です。普通のシャーペンは、芯を保持する“チャック”という部品が3つ割りになっていますが、『オレンズネロ』は“ボールチャック”という2つのボールで芯をつかむ構造になっています。3つ割りチャックはノックをすることで芯が出てきますが、ボールチャックは筆圧がかかった場合には芯を保持し、離すと芯を出す仕組み。つまり、芯が“後ろ”に下がることは制御しますが、“前に”出すことは許容するつくりになっているのが大きな特徴であり、開発時に試行錯誤してこだわった部分でもあります。2014年にはすでにオレンズネロの構想があったのですが、書き心地など様々な課題があり、完成までに2年もかかってしまいました」(ぺんてるマーケティング推進部担当者)
この機構により、紙からペン先を離したときに、磨り減った分だけ芯が戻るというわけだ。
また、一般的なシャーペンの開発期間は1年程度とのことなので、オレンズネロは通常の倍の開発期間を要した、ぺんてる渾身の商品なのだ。では、そもそもなぜ3000円以上もする高級シャーペンを開発しようと思ったのだろうか。
「オレンズネロは、2014年に発売した『オレンズ』という商品の進化形なのですが、こちらもラインナップは、芯径0.2ミリと0.3ミリでした。細い芯というのは、書いているとすぐに磨り減ってしまい、ノックの煩わしさが増えてしまいます。その不満点を解消するために『自動芯出し機構』を組み込んだのがオレンズネロです。ただ、オレンズは定価が500円でしたが、自動芯出し機構を付けるとなると、部品点数がかなり増えて3000円という価格になってしまいました。つまり、狙って高級シャーペンを開発したというよりは、技術者がこだわりぬいた結果、3000円になってしまったということなのです」(同)
一般的なシャーペンは15個前後の部品で構成されているのに対し、オレンズネロは0.2ミリタイプで28個。さらに、それを機械ではなく人の手によって組み立てているのだとか。