定時株主総会を開く28日までに半導体事業売却の契約締結をするというシナリオは夢物語に終わった東芝経営陣は、矛先を半導体事業で合弁関係にある米ウエスタン・デジタル(WD)に向けた。WDを「虚偽の事実を流布して入札妨害をした」として訴え、1200億円の賠償金を請求し、加えてWDの東芝内での半導体事業に関する情報アクセス権を遮断したという。WDへの牽制というよりは事態泥沼化へ自ら進み、上場廃止の可能性を高める常軌を逸した行動といえよう。
この泥沼を泳ぎきって、なんとか2018年3月期の債務超過を免れたとしても、虎の子の半導体事業を売却した後に、東芝を支える事業は果たしてあるのであろうか――。
白物家電事業(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機、炊飯器、オーブンレンジなど)を行う東芝ライフスタイルは、すでに16年6月に中国のマイディアグループ(旧「美的集団」)に株の80.1%を売却済である。液晶テレビ「レグザシリーズ」やBDレコーダー「レグザブルーレイシリーズ」などの映像機器事業は東芝100%出資の東芝映像ソリューションに移管したが、ストリーミングサービスなどへの急激な移行によるハード市場の縮小を考えるに、この事業が東芝を支える事業になるとは到底思えない。また、富士通とVAIOとの事業統合に失敗したパソコン事業は東芝クライアントソリューションに移行したが、パソコン市場の現況をみるにこれも望み薄である。単独で生きていくのは極めて難しいであろう。
そもそもこの2社は、東芝が主要グループ企業とする3社のうちの2社だが、残りの1社は東芝が50.02%の株を有するPOS(販売時点情報管理)システムに強い東芝テックである。東芝は否定するが、東芝テック株の売却の話が出てもおかしくはない。
しかし、東芝テックは16年3月期に海外POS事業で多額損失が発生し、連結当期利益は1000億円強の赤字に陥った。その前年も赤字であったので、3期連続赤字を回避すべく、17年3月期は不採算事業の切り捨てにより売上を減らしつつ78億円の当期利益を確保しているが、業績がかんばしいとはいえない。東芝の連結売上高は、5兆円規模なので、売上5000億円規模の東芝テックは、東芝の連結売上の約1割を占めることになる。
カンパニー制
東芝は現在、以下の4つを事業領域とするカンパニー制を敷いている。
・電子デバイス事業領域
・ICTソリューション事業領域
・社会インフラ事業領域
・エネルギー事業領域
16年3月期の事業領域区分(セグメント)と売上は次のとおり。
・電力・社会インフラ:2.0兆円(原子力、火力・水力、送変電・配電、産業・交通)
・コミュニティソリューション:1.4兆円(照明、東芝テック)
・ヘルスケア:0.4兆円
・電子デバイス:1.6兆円(ディスクリート、システムLSI、メモリ、HDD)
・ライフスタイル:0.8兆円(PC、映像、家電)
・その他:0.5兆円