松居一代さん、「現在のご状態」を精神科医が分析…「退行期パラノイアによる妄想の可能性」
先週、女優の松居一代が動画サイト「YouTube」に自身が登場する動画をアップし、夫で俳優の船越英一郎に愛人がいると主張した。さらに、船越は日頃からバイアグラを使用している「バイアグラ男」だと語り、世間を騒がせた。船越サイドは、すでに裁判所に離婚調停申立書を提出したことを明かしているが、松居は自身のブログで「1年5ヶ月も尾行され続けているの」「4月21日の夜から 旅立つ準備をしていました」などと綴っているため、芸能界からも松居の状態を心配する声が相次いでいる。
たとえば、演出家のテリー伊藤は6日放送の『ビビット』(TBS系)内で、「かなり松居さん自身が、精神的なバランスを崩している部分がたくさんあると思うのね」と推察。さらに「心の部分で傷ついているんでしたら、第三者の専門家の方の相談を受けたほうが健康的な感じがします」と発言した。
そんな松居の現在の状態について、精神科医の片田珠美氏に解説してもらった。
「猜疑心が強い」だけでは片づけられない
「1年5ヶ月も尾行され続けているの」などと書いたブログやサイト「YouTube」で公開した「船越英一郎 裏の顔」という告白動画で、松居一代さんが世間の注目を浴びている。一連の言動を見ていると、猜疑心が強いとか、嫉妬深いというだけでは片づけられず、医師としては、被害妄想と嫉妬妄想を抱いているのではないかと危惧せざるを得ない。
被害妄想
まず、松居さんはブログで次のように発言している。
「告白するよ 実はもう…1年5ヶ月も尾行され続けているの だから、夜は、まったく電気を使わない生活をしているのよ 真っ暗のなかにいるんです」
「いつでも、全力で走れる靴スニーカー生活です」
「常に、後ろを振り返り運転するときは、バックミラーを確認する生活です」
これは、自分が誰かに追跡されていると思い込んでいるからだろう。重要なのは、一連の発言が単なる思い込みのレベルを超え、妄想の域に達している可能性が高いことだ。妄想と判断するには、次の3つの条件が揃わなければならない。
(1)現実離れした内容であっても、
(2)本人が真実だと確信していて、
(3)周囲の人が訂正するのは不可能
松居さんのブログを読む限り、この3つの条件を満たしているようだ。動画に登場したご本人の表情や目つきは、医師の視線から眺めると、妄想的確信に満ちているように見える。したがって、被害妄想の一種である追跡妄想を抱いている可能性が高い。
見逃せないのは、松居さんがブログで何度も触れている「1年5ヶ月前」、つまり2016年1月に初めての離婚危機報道があったことだ。ちょうどその頃、夫の船越英一郎さんが妻の松居さんに三行半を突きつけたと報じられた。船越さんが離婚調停を申し立てたという最近の報道と照らし合わせると、夫婦関係の破綻が松居さんの精神変調の最大の原因になったと考えられる。
嫉妬妄想
それだけ夫への執着が強いのか、若い女優からのメールに嫉妬した松居さんが「船越の携帯を鍋で煮た」と報じられたこともある。嫉妬とは、自分が所有している幸福を失う不安にほかならず、嫉妬深いのは喪失不安が強いせいなので、松居さんは夫を失いたくなかったのだろう。
ただ、最近は、嫉妬深いというだけでは片づけられない行動を松居さんは起こしている。6月下旬、船越さんの“愛人”がハワイにいると主張し、週刊誌の記者と一緒にハワイまで飛んだらしい(「女性セブン」小学館/7月20日号より)。同誌には、さらに松居さんは“愛人”と信じる女性に執拗にコンタクトをとろうとしたため、その女性から抗議がきて大騒動になり、結局、現地の当局から接近禁止命令が出されたと書かれている。
このハワイ在住の“愛人”について、松居さんはブログで「不倫相手は私の友、妻の友達です。彼女は人妻です。不倫をして2年半です」と主張している。(現在はブログから削除)船越さんの不倫相手と名指しされた女性は、「事実無根」と否定しており、松居さんを訴える意向とも報じられている。
客観的な証拠を提示せず、ダブル不倫だと訴えているところを見ると、喪失不安が病膏肓に入るレベルになり、嫉妬妄想を抱いているのではないかと疑わざるを得ない。なお、もともとは仲の良かった親友、あるいはかつて愛していた恋人や配偶者が自分に害を加えていると確信し、攻撃的になるのは、妄想を抱いている人にはよくあることだ。これは、味方だと思っていた相手が敵になったと感じるからである。
退行期パラノイア
40~60歳くらいの女性が被害妄想や嫉妬妄想を抱く場合、その原因疾患として多いのは「退行期パラノイア」である。
退行期パラノイアは圧倒的に女性に多く、不安と高揚が入り交じった不安定な精神状態になる。最初はなんでも邪推し、ちょっとした疑念や不信感を抱くことから始まり、次第に誤解や錯覚が頻繁になる。やがて、一貫した内容を持つ妄想へと発展する。
幻聴もしばしば出現する。松居さんがブログに「4月22日の早朝 あたしの耳にひとつのメッセージが聞こえたんです」と書いているのは、医師としての長年の臨床経験から、幻聴の可能性も否定できないと筆者は考える。
退行期パラノイアになりやすいのは、
(1)きわめて活動的で、自我意識が強く、自己中心的な性格
もしくは、
(2)敏感で猜疑的な性格
の持ち主で、男性的な女性である。
これまでの報道から、松居さんは(1)と(2)の性格傾向をいずれも兼ね備えているように見える。また、家政婦のミスに怒って怒鳴り散らしたため、家政婦が次々に辞めていったという話を聞くと、気性の激しさでは男性にひけをとらない女性でもあるように見受けられる。
退行期パラノイアはきちんと治療すれば治る病気である。第一、夜まったく電気を使わず、真っ暗ななかで生活していたら、誰だって不安が一層強くなり、孤独感にさいなまれるだろうから、一刻も早く治療を受けることをお勧めする。
もっとも、残念ながら、ブログに「私は病気にはなっておりません」と書いているところを見ると、自分が病気だという自覚、つまり「病識」がないようだ。「病識」のない方を治療に導入するのは至難の業であり、家族か友人が説得して病院に連れて行くしかない。松居さんの周囲に信頼できる人はいないのだろうか。
(解説=片田珠美/精神科医)