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自民党離党の若狭勝議員、「自民党の闇」を決意の告発…加計・森友問題の本質

構成=長井雄一朗/ライター
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自民党離党の若狭勝議員、「自民党の闇」を決意の告発…加計・森友問題の本質の画像1衆議院議員の若狭勝氏

 小池百合子・東京都知事率いる「都民ファーストの会」の圧勝、自民党の大敗で幕を閉じた東京都議会議員選挙。この選挙で都民ファーストの会を応援するために自民党を離党したのが、若狭勝衆議院議員だ。

 今後の政局のキーマンと目される若狭氏は、6月に『参謀力 -官邸最高レベルに告ぐ さらば「しがらみ政治」- 元東京地検特捜部検事・政治家の闘い』(双葉社)を刊行するなど、活動の幅を広げている。

 同書には「TOKYOの『巨悪』」「日本の深い闇」などの言葉が並び、都民ファーストの会は国政進出が取り沙汰されている渦中だ。東京地方検察庁特別捜査部で「政治とカネ」の問題を追及した過去を持つ若狭氏は、今の日本政治および国民の不満をどうとらえているのか。また、国政に打って出る新党結成はあり得るのか。話を聞いた。

「利権」や「忖度」を生む「しがらみ政治」

――「政治とカネ」の問題は、今なお続いています。

若狭勝氏(以下、若狭) 東京地検特捜部副部長などとして、日歯連(日本歯科医師連盟)の1億円ヤミ献金事件などをはじめとする自民党の利権構造に切り込み、自民党の責任追及をしてきましたが、そのときから今日に至るまで連綿と続いているのは「しがらみ政治」です。

「しがらみ政治」は、関係が深い特定の人物や団体に利益を供与する「利権政治」や「忖度政治」にもつながります。そして、そのような利権政治などを覆い隠すため、とかく「情報公開」や「説明責任」に後ろ向きの姿勢になります。

 では、なぜ私が2014年12月の衆院議員選挙で自民党から立候補したか。自民党の中から、しがらみ政治の問題をきちんと解決したいという思いがあったからです。かねてより「『しがらみ政治』からの脱却こそが日本の政治を成熟させる」と考えていますが、それは今でも変わりません。

 しかし、森友学園や加計学園の問題を見ていると、「しがらみ政治」の体質や構造はまったく変わっていない。特に、加計学園は政治家の問題です。これは自民党の「しがらみ政治」の発露であり、東京の「利権構造」も同様です。

――今は、政治献金よりも政治パーティー券を購入することで政治家とのパイプを強めようという動きがあり、形を変えた「利権構造」が生まれています。

若狭 「政治とカネ」の問題は、資金援助や寄付の額が大きくなればなるほど、人間関係の結びつきが強くなって癒着が生じやすくなります。

 仮に、ある政党にA社が多額の寄付をしていて、B社はしていない。そして、行政が業者を選定する際にA社を選ぶ。これは、人間心理としてはある意味で自然です。

 しかし、それを当たり前のように見過ごしていては「政治とカネ」の問題はなくなりません。

都議選で自民党が唯一当選した1人区とは

――若狭議員の「政治パーティーをやらない」「業界団体からの支援を受けない」という姿勢に驚きました。これは、自民党の監査役のような立場だったからでしょうか。

若狭 その通りです。検事時代にゼネコンを調査したことがありますが、総務部や業務部など政治家とのパイプ役である「マル政」担当者は、政治家のランク付けをしていました。実力者や親密な政治家はAランクになり、パーティー券の購入金額が跳ね上がります。そして、Bランクになれば購入金額が下がる。「これこそが諸悪の根源だ」と、かねてより思っていました。

――現在も、ゼネコンの「マル政」担当者は相変わらずランク付けをしています。こういったことが、著書でも言及している「日本の深い闇」にもつながっているのではないでしょうか。

若狭 その通りです。「闇」は光が当たらない、当てられないところだからこそ、「闇」として存在します。そして、闇であるからこそ、一般の人にはあまり知られていないのです。

 しかし、闇の部分に光を当てないと、いつまでたっても政治は変わらないでしょう。闇が闇のままでは、日本の政治は三流、四流のまま。私は検事時代から「日本の闇」を追及してきましたが、それでも「だいぶ良くなったかな」とは感じています。しかし、自民党の本質が変わらないのは、そもそも「しがらみ政治」は「しがらみ選挙」が生み出しているからです。

 自民党の選挙は、圧倒的な組織力と資金力を駆使するというやり方です。先の都議選で象徴的だったのは、自民党の候補者が当選した島嶼部の結果です。1人区で唯一、都民ファーストの会が議席を獲得できませんでした。

 自民党は11の島すべてに選挙のための事務所を設置し、島から島の移動手段をチャーターするなどスムーズに移動できる態勢を整え、きわめて多額の資金を投入しました。

 一方、都民ファーストの会の候補者は、重いスピーカーをかばんに入れて持ち運び、島と島の移動は定期船などだったため、機動力に欠けました。そんな島嶼部では、自民党の古い選挙システムが機能した。それは同時に、昔ながらの「しがらみ選挙」が続くということを意味します。

 今、東京都港湾局が発注した伊豆大島(大島町)と利島(利島村)の大型港湾工事の談合疑惑が問題になっています。大島町の建設業は自民党を支えていますが、それを都民ファーストの会が崩せなかったということです。私も選挙期間中に島に行きましたが、「まだまだ、高い壁がある」と実感しました。

“小池劇場”は誤解?敗因分析を怠った自民党

――しかしながら、都民ファーストの会の躍進は大きな変化です。都民の間にも「しがらみ政治から脱却したい」という機運が高まっているのではないでしょうか。

若狭 その変化は、16年7月の東京都知事選挙に端を発するものです。自民党東京都支部連合会は、推薦した増田寛也氏が敗北して小池都知事が誕生した分析や総括を怠った。その姿勢が、都議選の敗北にも直結したのです。

 今、大きなうねりが生まれてきており、古き「しがらみ政治」から「新しい政治」に変わりつつある過渡期といえます。その端緒が小池都知事の誕生です。これまでのような組織力と資金力に任せた「しがらみ選挙」から脱却しようという動きです。それは、ヨーロッパでも同じ。フランスではエマニュエル・マクロン大統領が誕生し、その後の総選挙ではマクロン大統領の新党が大勝しました。

 しかし、そうした大きなうねりや流れを自民党は軽視しました。都知事選の敗北を受けて、二階俊博幹事長が「撃ち方やめ」と宣言したにもかかわらず、自民党都連は小池都知事を応援した7人の区議会議員を除名処分にするという暴挙に出ました。これは、敗因の分析ができていないからこそ行われたといえます。

――就任から約1年の小池都知事については、いかがでしょうか。

若狭 一部のマスコミや政治家は「小池都知事は劇場型。敵をつくり、対立軸を鮮明にして有権者に訴える手法だ」という言い方をしますが、私はそうは思いません。あえて敵をつくっているわけではなく、自然の流れだと思います。

 今は「新しい政治」に向かう過渡期ですから、必然的に「しがらみ政治」との対決となります。そのため結果的に、内田茂・前自民党都連幹事長ら執行部や石原慎太郎元都知事などは敵対する関係にならざるを得ない。この構図を理解しなければ、都知事選、小池都知事が支援する現職が勝利した千代田区長選挙、都議選の結果の本質には何があるのか、理解することはできません。

 しかし、分析を行わない自民党は「自分たちの選挙戦術が悪かったから負けた」とは思っていない。「小池勢力の勝利は、あくまで一過性のもの」という認識でした。それが、都議選の敗北にもつながったわけです。

――自民党都連の新会長として、執行部側には丸川珠代・五輪相を推す声があります。一方、非主流派には小池都知事に近い鴨下一郎元環境相を推す声もあります。

若狭 自民党都連執行部が新会長に丸川五輪相を推しているのは、丸川さんであれば、コントロールできるからと思っているからだと思います。それは、まさしく「小池さんが都知事になると、都連のコントロールができない」と判断したために増田氏を推した理由と同じです。つまり、自民党は大敗したにもかかわらず「しがらみ政治」を続けようというわけです。

「当選○回」を金科玉条にする自民党の問題点

――古き「しがらみ政治」からの脱却に期待する国民は多いと思います。翻って「新しい政治」は、どのようなものになるのでしょうか。

若狭 まず、「しがらみ政治」を正すためには政治の手段を変えていく必要があります。カネのかかる選挙はやめなければなりません。選挙にカネがかかれば、政治にもカネがかかります。

 また、自民党の問題点は「当選○回」というのを金科玉条のように掲げていることです。そうなると、議員は次の選挙に当選することしか考えなくなってしまう。選挙に当選するためにはカネがかかるので、政治パーティーを開いてパーティー券を購入してもらう……という流れでしがらみが生まれてしまいます。今こそ、この流れを断ち切るべきです。

 私は、それぞれの分野を極めた民間の方々が、もっと選挙に出て当選すればいいと思います。そして、そうした方々が要職に就くようなシステムができれば、国会はだいぶ活性化されると思います。

――もちろん、自民党の中にも有能な政治家はたくさんいます。一方で、今は大臣待機組が増えており、閣僚が適材適所とはいえない現実があります。「安倍晋三首相に近しい人を重用する、お友達内閣では」という声もあります。

若狭 その通りです。当選回数が多いのに大臣になれない待機組が、かなりいます。しかし、「このポストが空いているから、誰々を当てはめよう」というのは適材適所ではなく、国民目線の政治とはいえません。

 数は限られますが、大臣は民間から登用することも可能です。しかし、国会議員の中には、大臣になりたくてしょうがない“大臣病”という治癒不可能な病気があります。

 そして、大臣になるためには、当選回数を重ねなくてはならない。当選を重ねるためには、公認をもらわなければならない。公認をもらうためには、自民党や内閣に対して言いたいことがあっても口をつぐむことになる……。その結果、誰も何も言わなくなっているのが、今の自民党です。

――ありがとうございました。

 後編では、新党結成の可能性や自民党離党の真相、自身の政治ビジョンなどについて、さらに若狭議員の話をお伝えする。
(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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