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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

日本の国家的「がん治療」研究、世界の潮流と逆行…成果は期待薄、医師主導の限界

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 国がんは厚労省管轄で、日本のがん医療対策の中核だ。東大は文科省管轄の最大の研究機関であり、「オールジャパン」で研究開発を進めているといっていい。国がんは「SCRUM-Japan」なるプロジェクトを立ち上げ、総額20億円の予算を計上した。「がんの患者さんの病変から採取した組織の遺伝子異常を調べ、それぞれの遺伝子異常に合った治療薬や診断薬の開発を目指す日本初の産学連携全国がんゲノムスクーリングプロジェクト」と説明する。

 厚労省も支援し、2017年から始まる「第3期がん対策推進基本計画案」にも、がんゲノム医療の推進を盛り込んだ。実行部隊の中心は、国がんの研究所長で東大大学院医学系研究科教授(細胞情報分野)も務める医師の間野博行氏だ。

 そして、そのパートナーが、医療機器メーカーのシスメックスである。同社は神戸に本社を置く関西を代表する企業だ。社長を務める家次恒氏は、1973年に京都大学を卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行した。東亞医用電子(現シスメック)のトップだった義父の死を受け、86年に同社に入社。96年に社長に昇格した。その後、190カ国以上と取引するグローバル企業に成長させた。いまや家次氏は神戸商工会議所の会頭も務める名士で、シスメックスの社外取締役には神戸の理研多細胞システム形成研究センターの高橋政代博士も名を連ねる。

 シスメックスは15年11月に国がんにラボを開設している。今年2月には、肺がんや肉腫を対象にターゲット遺伝子パネルの開発を目的とした共同研究契約を東京大学と締結した。この契約の東大側の窓口が間野教授だった。二人三脚だ。

全ゲノムシークエンス


 ただ、私はこのやり方ではうまくいかないだろうと思う。パネルシークエンスは、一人当たりのコストは4万円程度と比較的安価だが(市販サービスは数十万円)、「半分以上の関連遺伝子を見落としてしまう」(ゲノム研究者)からだ。

 すべての遺伝子を解析できる全ゲノムシークエンスや全エクソンシークエンスと、特定の遺伝子だけを解析するパネルシークエンスのポテンシャルの差は明らかだ。
 
 ゲノムシークエンスの技術は進歩し、費用は急速に低下している。現在、全ゲノムシークエンスの費用は約12万円だが、米国イルミナ社の最新の次世代シークエンサーを用いれば、半額以下になるといわれている。小児ゲノム研究の世界的な権威であるミズーリ大学のステファン・キングモア博士は、「パネルシークエンスは20年までには役に立たなくなる」という。

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